春の訪れとともに味わう、3月の先付|阿倍野・安来家
3月に入り、寒さのピークも過ぎ、少しずつ春の気配を感じる季節となりました。
まだ肌寒さが残る日もありますが、店先に並ぶ食材にも春の訪れが感じられるようになりました。
安来家でも、春の息吹を感じる日本料理をご用意しております。
なかなかお料理のご紹介ができておりませんでしたが、これから少しずつ、旬の味わいをお伝えしてまいります。
本日は、3月弥生の先付をご紹介いたします。

甘夏とうるい、ホタルイカの黄身酢掛け
左上の器にお納めしたのは、甘夏とうるい、ホタルイカの黄身酢掛けです。
春の爽やかさを感じる甘夏の果汁は、デザートとしてはもちろん、
春野菜と組み合わせたお料理にも非常に相性が良いと考えています。
ほのかな苦味を持つうるいと合わせることで、より深みのある味わいに。
そこに加えるのは、旨味と甘味、そして独特のほろ苦さを持つホタルイカ。
ホタルイカの柔らかな食感と凝縮された旨味が、甘夏の酸味と絶妙に調和し、
一口ごとに春の訪れを感じられる仕立てとなっております。
さらに、まろやかさを引き出すために、黄身酢にはヨーグルトを少し加え、口当たりをより優しく仕上げました。
そして、春らしさを添えるのが、ほんのりとした桜の香りが広がる桜パウダー。
視覚でも春を楽しんでいただけるよう、繊細にあしらいました。
蛤の旨味を凝縮した、蛤グラタン
右下の器には、**蛤の殻を器にした「蛤グラタン」**をご用意しました。
一般的なグラタンとは異なり、クリームを一切使用せず、蛤の出汁だけで仕上げた一品です。
蛤からじっくりと丁寧に引いた出汁は、濃厚でありながらも繊細な味わい。
その旨味を最大限に活かすため、具材には蛤の身と、新玉ねぎの甘味のみを加えました。
蛤の出汁をたっぷりと含んだこのグラタンは、一口頬張ると口の中いっぱいに春の滋味が広がります。
とろりとした舌触りと、ほんのり感じる新玉ねぎの甘さが、蛤の持つ力強い旨味をより一層引き立てています。
3月といえば桃の節句。この季節ならではの祝いの雰囲気を、華やかで可憐な盛り付けに込めました。
桃の花が咲き誇る春の訪れを感じながら、一口ごとに季節の移ろいをお楽しみいただければと思います。
安来家では、旬の食材を活かしながら、毎月、移りゆく季節を感じていただけるお料理をお作りしております。
「いつお越しいただいても、何度訪れても、新鮮な感動を味わっていただける日本料理を」
その想いを胸に、日々精進し、本物の味を追求し続けております。
春の訪れを感じるこの季節、どうぞ安来家で日本料理の粋をご堪能ください。