阿倍野・安来家の日本料理が紡ぐおせち ― 二段重に込めた伝統と願い
紅葉や銀杏が色づき、街の景色がゆっくりと秋色に染まる季節になりました。
朝晩には冷たい風が吹き、季節が冬へと歩みを進めているのを感じますね。
阿倍野・安来家でも、店内の懐石料理は秋の趣を映し、食材・器・盛り付けのすべてで季節の移ろいを表現しています。
そして今回は、そんな会席・懐石の精神をそのまま受け継ぐ「おせち料理」のご紹介を。
前回の三段重に続き、今回は安来家で最も人気の高い二段重を詳しくご紹介いたします。

安来家のおせち料理は、三段重から一人用まで全四種。
なかでも二段重は、華やかさと量のバランスが良く、ご家族で囲むお正月の食卓にぴったりとご好評をいただいております。
弐の重には、三段重と同様に、上から鶏松風・袱紗卵・車海老煮を丁寧に敷き詰めてまいります。
昔ながらの“仕切りを設けない詰め方”を採用しており、折の中には隙間なく御料理が詰め込まれます。
その小さな空間にも心を込めて詰めるのが、安来家のこだわりです。
わらびイカは、イカに細工包丁を入れ、卵黄と青海苔を合わせて“わらび”の姿に見立てた一品。
さらに、炊き合わせの中には助子(たらの子)の昆布巻き。魚卵は“生命の象徴”とされ、子孫繁栄や家内安全を願う意味を持ちます。
同じく縁起物である穴子鳴戸巻きには、うずらの卵を芯にして巻き込み、渦のように巡る幸運を表現しています。
黒豆の下には、隙間を埋めるように詰められた小川からすみ。
ボラの卵巣を塩漬け・乾燥させた高級珍味「唐墨(からすみ)」を、イカと白身魚を合わせたすり身で包み蒸し上げる手間のかかった一品です。
ほどよい塩味と旨みの奥行きがあり、日本酒との相性も抜群です。
意味を味わう、日本料理としてのおせち
今回のご紹介は偶然にも“卵料理”が多くなりましたが(笑)、それには理由があります。
おせち料理とは、単なるご馳走ではなく、一年の始まりに「願いを込める料理」でもあるからです。
子孫繁栄、無病息災、五穀豊穣。
それぞれの食材に、意味と祈りが込められています。
重箱に詰める「重ねる」という行為にも、“めでたさを重ねる”という縁起がある。
だからこそ、安来家ではその一段一段を、まるで季節の懐石のように構成し、流れを感じるよう仕立てています。
懐石料理の心で詰める日本のおせちは、伝統であり、文化でもあります。
手間と時間を惜しまない、それだけは変わらない大切なことです。
おせち料理は、まだまだご予約を受け付けております。
配達・店頭お渡し、どちらも可能です。
阿倍野で日本料理・懐石・会席を手がける安来家の職人が、心を込めて仕上げるお正月の御料理。
冬の訪れを告げる今、ぜひお気軽にお声がけ頂ければと思います。
次回は、二段重に続く「一段重」と「お一人様用おせち」をご紹介いたします。
