器の中に描く季節の移ろい。春本番の安来家の「八寸」
前回は母の日のお話でしたので、少し季節が進んでいましたが、今回は今月四月ど真ん中の御料理のご紹介を。
日本料理において、「季節の移ろい」を、お客様に一番ダイレクトに感じていただけるのが「八寸(はっすん)」という一皿です。海の幸、山の幸、それぞれの「走り・旬・名残」をひとつの器の中に少しずつ盛り込み、まるで小さな庭のように季節の情景を描き出します。
今回は、今まさに安来家の厨房で仕込み、お出ししている八寸の様子を詳しくご紹介いたします。

右の列:出来立ての温もりと、お酒が進む海の恵み
四角い白木の盆に桜の枝を添え、右・中央・左と三列に分けてお料理を盛り付けた今月の八寸です。
まず右側の列には、手前から「しらすのなめろう」「だし巻き卵」「鯛皮ポン酢」と並べています。
この中で、お店としてこだわりを持っているのが「だし巻き卵」です。これは決して作り置きをしません。お客様がお席につかれ、お酒やお食事が進むペースを見計らい、お出しする直前に厨房でふっくらと焼き上げています。熱々の状態で箸を入れると、閉じ込められていたお出汁がじゅわっと溢れ出します。
その手前には、春に美味しいしらすを混ぜ合わせ仕上げたなめろうと、さっぱりとした鯛皮ポン酢。冷たい日本酒がよく合う、大人の並びです。
真ん中の列:春の香りを重ねて
中央の列は、手前から「そら豆の蜜煮」「筍の木の芽和え」「鯛の子」です。
ほっこりとしたそら豆は、蜜で優しく炊き上げることで、鮮やかな緑色と上品な甘みを引き出しました。そして、この季節の和食に欠かせないのが「木の芽(山椒の若葉)」の香りです。春の味覚である筍に、木の芽を和えることで、口の中で季節がバトンタッチするような感覚を味わっていただけます。
関西の春からの定番である鯛の子も、丁寧に出汁を含ませて、花が咲いたように美しく炊き上げています。
左の列:手間を惜しまない、細やかな仕事
そして左側の列。手前から「新じゃが芋のオランダ煮」「筍の煮凝り」「桜豆腐」です。
「オランダ煮」という言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。これは、食材を一度油でサッと揚げてから、お出汁で甘辛く炊き上げる手法のことです。新じゃが芋を揚げることで表面にコクが生まれ、甘辛い味が芯までしっかりと染み込み、ホクホクとした食感が際立ちます。
その奥には、少しずつ暖かくなる気候に合わせて、ひんやりと口当たりの良い筍の煮凝りを。
一番奥の桜豆腐は、本物の桜と上質な吉野葛(よしのくず)を合わせて、厨房でじっくりと時間をかけて練り上げたものです。なめらかな舌触りのあとに、ふわりと奥ゆかしい桜の風味が広がります。
個室で過ごす時間と、ご自宅での楽しみ方
こうした八寸は、すべてが一つの完成されたコース料理のハイライトでもあります。
お店にお越しいただいた際は、周りを気にせず過ごせる完全個室のお座敷やイス席で、ご家族やご友人との会話を楽しみながら、一品一品に込められた手仕事と季節の移ろいを感じてみてください。
また、安来家では仕出し料理の配達も行っております。これから梅雨に入り、「雨が降っているから、外に出るのは少し億劫だな」という日もあるかもしれません。
そんな時は、ご自宅の食卓に配達のお弁当を広げてみてください。ご自宅へお届けする折詰弁当や松花堂弁当の中にも、厨房で丁寧に仕込んだ季節の手仕事をたっぷりと詰め込んでお届けいたします。お家で好きなお酒を傾けながら、ゆっくりと初夏の味覚を味わうのも、素晴らしい休日の過ごし方です。
ご来店のお席も、配達の仕出しも、お客様の「美味しいものが食べたい」という想いに全力でお応えします。人数やご予算、お好みなど、お気軽にお電話でご相談ください。
