頬を撫でる風にも確かな温もりが混じり、阿倍野の街にも柔らかな春の陽射しが降り注ぐ季節となりました。
日本料理「安来家(やすきや)」では、走り・旬・名残という季節の移ろいを一皿ごとに込めて、皆様をお迎えしております。
懐石料理の醍醐味は、旬の鮮魚や力強い大地が育んだお野菜を味わっていただくことはもちろんですが、
お食事の余韻を決定づける「水物(甘味)」もまた、私たちが大切にお仕度しているおもてなしの一つです。
今月、四月(卯月)にご来店いただいたお客様にご用意しているのは、うららかな春の野を思う水物の盛り合わせ。
和の情緒に少しばかり洋の華やかさを添えた、春の一皿でございます。

春の息吹を閉じ込めた、ふんわり蓬(よもぎ)のロールケーキ
お盆の上に咲いた桜の器。その中央で鮮やかな萌葱(もえぎ)色を見せるのは、春を告げる野草「蓬」をたっぷりと生地に練り込んだ自家製のロールケーキです。
口に運んでいただきますと、新緑の清々しくもどこか懐かしい香りがふわりと広がります。この「春の香り」を逃がさないよう、焼き上げの温度や時間に気を配りました。空気を含ませて焼き上げた生地は、軽く、舌の上でほどけるような柔らかさに仕立てました。
そして、中に巻き込んだクリームにも、少しばかりひと手間を加えております。
通常の生クリームに、まろやかなコクとほのかな酸味を持つマスカルポーネチーズを合わせました。蓬の持つ野趣あふれる風味に、マスカルポーネの芳醇で上品なコクが重なり合うことで、和の食材が洋の装いをまとう、軽やかな味わいに仕上がっております。
なめらかな口どけを心がけた、きな粉のアイスクリーム
ロールケーキに寄り添うように添えているのは、瑞々しい紅色の苺と、淡い色合いのきな粉アイスクリームです。
香ばしいきな粉を使ったアイスクリームは、和の甘味としてたいへん馴染み深いものですが、作り手にとっては「粉っぽさ」が残りやすく、口当たりのバランスをとるのが少し難しいものでもあります。
お食事の最後を心地よく締めくくっていただけるよう、きな粉の豊かな風味をしっかりと引き出しつつも、舌触りはあくまでもなめらかになるよう、配合に細心の注意を払いました。ひんやりとした冷たさの中に、大豆の優しい甘みがふんわりと広がる仕上がりとなっております。
合間に添えたフレッシュな苺の瑞々しい酸味が、お口の中をさっぱりと整えてくれますので、最後まで飽きることなく春の調べをお楽しみいただけることと存じます。
くつろぎの空間で、心ほどける食後のひとときを
季節の懐石料理、そしてこちらの春のデザートは、安来家の店舗にてお召し上がりいただけます。
完全個室のお座敷や、足元を気にせずお過ごしいただけるイス席の個室では、周囲の喧騒を離れ、大切な方と水入らずの時間をお過ごしいただけます。また、少人数様であれば、半個室のカウンター席でのひとときもおすすめです。
季節のお料理と甘味の余韻に浸りながら、温かいお茶でほっと一息つく。
そんな心ほどける時間をご提供できればと願っております。
春は、新しい門出のお祝いやご会食など、皆様でお集まりになる機会の多い季節でございます。
おかげさまで、土日や祝日はお座敷から順にお席が埋まりやすくなっております。お顔合わせやご家族の慶事など、ご予定がお決まりになられましたら、どうぞ少しだけお早めに安来家までお声がけくださいませ。
皆様の春の思い出を彩るお手伝いができますよう、阿倍野の静かな空間で、心を尽くしておもてなしをさせていただきます。
