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吹く風に心地よい春の深まりを感じる季節となりましたね。

日本料理の阿倍野「安来家(やすきや)」では、日々移ろいゆく季節の美しさを、一つひとつのお料理に映し出してお客様をお迎えしております。

懐石料理において、コースの中盤でお出しする「椀物(わんもの)」は、料理人の腕と心が最も試される、いわば華のような存在です。毎朝、昆布と鮪節に向き合い、雑味のない一番出汁を引くことから、私たちの1日は始まります。

四月(卯月)にご来店いただいたお客様にご用意しているのは、

黒漆のお椀の中に小さな春の景色を仕立てた一品です。

蓋を開けた瞬間に立ち昇る、一番出汁と木の芽の香り

漆塗りの蓋にそっと手を添え、ゆっくりと開けていただきますと、立ち昇る一番出汁の豊かな香りと、天盛りにした「木の芽(山椒の若葉)」の爽やかな薫りです。

透き通ったお出汁の中で、まず目に入ってくるのは、手前に添えられた柔らかな桃色の「道明寺粉」。関西の春の和菓子である桜餅にも使われるこのもち粉は、あえて中に具材を入れず、丸く整えております。もっちりとした道明寺粉に、上品なお出汁がたっぷりと染み込み、噛めば優しい甘みと旨味が口の中に広がります。

その奥に控えるのは、なめらかに仕上げた黄色い「玉子豆腐」。

春のうららかな陽射しのような色合いが、お椀の景色に温もりを添えております。

蝶が舞い桜が咲く春の小川

道明寺粉と玉子豆腐の上には、春の訪れを告げる魚「白魚(しらうお)」をあしらいました。

白魚は非常に繊細なため、火の入れ加減一つで食感が大きく変わってしまいます。

塩水で少し締めてから、数%の塩水でボイルします。

なるべく白魚の1番美味しい状態を活かせるように。

ふっくらとした口当たりになるよう、丁寧に仕込みます。

人参はひらひらと舞う蝶の姿に、大根は可憐に咲く桜の花びらに。

春の小川のほとりのような景色を、お椀の中でお楽しみいただければと思います。

見た目の華やかさだけでなく、それぞれの食材が持つ味わいや食感、そしてお出汁が一つに重なり合う調和を大切にしております。

お座敷の静かな空間で、心温まるひとときを

安来家では、出来立ての最も美味しい瞬間を逃さぬよう、最適な温度で椀物をお席までお運びしております。

個室のお座敷では、周りの目を気にされることなく、ご家族や大切な方とのお食事をゆっくりとお楽しみいただけます。

蓋を開ける瞬間のわくわくとしたお気持ちや、温かいお出汁を一口含んだ時の安堵感を、静かなプライベート空間で存分にご堪能ください。

今は、ご入学やご就職、お顔合わせなど、新しい門出を祝うお席の多い季節。

阿倍野の喧騒から少し離れた安来家で、心ほどける春のひとときをお過ごしいただけるよう、真心を込めておもてなしをさせていただきます。

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