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前回に続き、安来家の茶懐石出張料理から、茶懐石の流れを少しご紹介いたします。

茶懐石は、お茶をおいしくいただくために用意される食事であり、華やかさだけを重ねる料理ではありません。

茶事の中では、飯、汁、向付から始まり、椀物、焼物などへ進んでいく流れがあり、席や流派によって細かな違いはありますが、一品ごとに出される意味があります。

前回は、最初の向付と一文字飯、汁物についてご紹介しました。

今回は、その続きとして椀物と飯器を中心に取り上げます。

出張料理では、店内とは違う場所で料理をお出ししますが、茶事の進行に合わせて器や飯器を用意し、次の料理へ自然につながるように支度を進めています。

椀物です。今回は蓬豆腐にアイナメを合わせ、周りにはじゅんさいをあしらい、吸い口には木の芽を添えました。茶懐石では、最初の飯、汁、向付に続いて、椀盛、あるいは煮物椀と呼ばれる椀物が出されます。旬の具材と出汁の香りをひとつの椀の中で味わう料理で、茶懐石の中でも大切な位置にある一品です。

ここでいう椀物は、最初に出る汁とは役割が異なります。はじめの汁は、飯や向付とともに席の入口を作るもの。

椀盛はその後に、季節の素材を椀の中心に据え、出汁の澄んだ香りや椀種の口当たりを味わっていただく御料理です。

茶懐石の流れを写真で追うと、同じ「汁気のある料理」に見えても、それぞれ置かれる場面が違うことがわかります。

蓬豆腐のやわらかな青み、アイナメの白身、じゅんさいの涼やかな口当たり、木の芽の香りが重なることで、5月下旬らしい初夏の気配が椀の中に入ります。2026年5月29日は、二十四節気でいうと小満の期間にあたります。草木が勢いを増し、季節が満ちていくころ。椀物にも、そうした時期の軽やかさと、これから水無月へ向かう涼しさを少し含ませています。

続いてはは飯器です。茶懐石では、飯は最初に少量だけ盛られ、その後、席の進みに合わせて飯器が出されます。

ご飯は最後にまとめて出すものではなく、茶懐石の始まりから席の中にある大切な存在です。

今回は、1回目の飯器と2回目の飯器で内容を変えてご用意しました。

1回目の飯器としてお出しした新生姜ご飯です。新生姜の香りは、初夏の料理に軽さを添えてくれます。

椀物の後にご飯の香りが入ることで、席の印象が少し変わり、次の料理へ向かう間合いも生まれます。

2回目の飯器としてご用意した白いご飯です。あえて白いご飯に戻すことで、料理の流れの中に落ち着きが出ます。少し水分が多いご飯というのも茶懐石ならではの特徴ですね。

飯器を二度に分け、内容を変えることで、同じ「ご飯」であっても席の中で受け取る印象は変わります。1回目の新生姜ご飯は、初夏の香りを感じていただく趣向として。2回目の白いご飯は、料理を受け止める余白として。茶懐石では、量を多くすることよりも、どの場面で何を出すかが大切になります。

写真で追っていくと、椀物や飯器が単独の料理としてではなく、茶事の時間の中で前後の料理と響き合っていることも見えてきます。ひとつの椀、ひとつの飯器にも、季節と順序の両方が込められています。

茶懐石には、細かな決まりや順序があります。ただし、決まりを見せるためだけの料理ではなく、お茶へ向かう時間を心地よく進めるための料理でもあります。安来家では、茶懐石や出張料理について、内容や人数、席の流れに合わせてご相談を承っております。

茶懐石の一品一品がどのように席の時間をつくっていくのか、少しでも伝われば幸いです。

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