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6月の先付として、夏越しの祓と茅の輪くぐりを題材にした一品をご用意しております。

写真のしつらえは、半年の節目に行われる夏越しの祓を思わせるものです。

料理そのものだけでなく、器の中に季節の行事や祈りの気配をそっと映すことも、日本料理の楽しみのひとつです。

夏越しの祓は、6月末に行われる大祓のひとつです。神社本庁の説明では、大祓は日々の暮らしの中で身についた穢れや災厄の原因となるものを祓い清める神事で、6月の大祓を夏越の祓、12月の大祓を年越の祓と呼びます。

夏越しの祓では、茅や藁を束ねた茅の輪を神前に立て、これをくぐって無病息災を祈る神社も多くあります。

茅の輪くぐりは、一般には左、右、左と八の字を描くように三度くぐる作法が知られています。

ただし、細かな作法は神社によって異なります。由来としては、旅の神を貧しいながらも手厚くもてなした蘇民将来の故事と結びつけて語られることが多く、茅の輪は災厄を避け、残り半年を健やかに過ごす願いを込めたものとして受け継がれてきました。

また、夏越しの祓では、人の形をした紙の形代に穢れを移して祓う風習や、京都を中心に水無月という和菓子をいただく習わしも知られています。いずれも、暑さが本格化する前に身を清め、これからの季節を無事に過ごしたいという思いにつながっています。日本料理でも、こうした行事の背景を料理の形や器使いに映すことで、季節をより身近に感じていただけます。

今回の先付では、その茅の輪を料理のしつらえに取り入れています。6月は梅雨入りへ向かい、蒸し暑さも増していく季節です。その前に一度、心身を清め、夏を無事に越すことを願う夏越しの祓。そうした季節の意味を、最初の一皿に込めました。

左の器は、手前に甘鯛の酒蒸し、奥に茄子のお浸しを盛っています。甘鯛の上には鱗揚げを添え、やわらかな酒蒸しの口当たりに、香ばしさと軽い食感を重ねました。真ん中には、千切りにした生姜を揚げています。生姜の香りは、梅雨どきの料理にすっきりとした余韻を添えてくれます。

甘鯛の酒蒸しは、先付として重くなりすぎないよう、しっとりとした味わいを大切にしています。そこへ鱗揚げの香ばしさを添えることで、同じ甘鯛の中にもやわらかさと軽い歯ざわりが生まれます。茄子のお浸しは、涼を感じる一品として、6月の湿り気のある空気に寄り添います。揚げた千切り生姜は、香りで全体を引き締める役割です。

右の器は、島根のブランドアジ「どんちっちアジ」の薬味巻きです。どんちっちアジは、島根県西部沖で漁獲され、浜田に水揚げされるマアジのうち、平均脂質10%以上、サイズ50g以上などの基準を満たしたものとされています。脂ののったアジを薬味で巻くことで、旨みの厚みがありながら、先付として重くなりすぎない味わいになります。

どんちっちアジは脂ののりが特徴ですが、薬味を合わせることで、香りと後口の軽さが加わります。先付は、これから始まる料理の入口です。最初の一皿で強く押しすぎず、それでいて季節の印象が残るよう、甘鯛、茄子、生姜、どんちっちアジをそれぞれ違う表情で組み合わせました。

夏越しの祓は、過ぎた半年を振り返り、これからの半年を健やかに過ごすための節目です。安来家の先付でも、その行事をただ飾りとして使うのではなく、食材の香り、口当たり、涼しさとともに、6月ならではの祈りと季節の移ろいを感じていただけるように考えました。

阿倍野の日本料理 安来家では、季節の懐石料理を、その時期の行事や旬の食材に合わせてご用意しています。水無月の先付として、夏を迎える前のひとときをお楽しみいただければ幸いです。

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