7月の椀物、鱧と冬瓜 夏のお椀
7月の椀物として、夏らしい鱧のお椀をご用意いたしました。
2026年は7月7日に小暑、7月23日に大暑を迎えます。梅雨明けの気配から盛夏へ向かう頃は、暑さの中にも、香りや余韻の涼しさがうれしい季節です。
椀物は、献立の中でも出汁の味わいをまっすぐに感じていただく一品。7月は、鱧を中心に、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子を合わせ、夏の空気を映すお椀に仕立てました。

お椀の奥には焼き茄子を入れ、手前には湯引きした鱧を置いています。上には冬瓜をのせ、鱧の上には梅を添えました。
仕上げには振り柚子をし、蓋を開けた瞬間にふわりと香りが立つようにしています。
椀物は、器の蓋を開ける一瞬も含めて味わっていただくお料理です。湯気とともに立ち上がる柚子の香り、出汁のあたたかさ、梅のほのかな酸味。
口に運ぶ前から、夏の献立へ自然に気持ちが向かうような一椀を目指しています。
鱧、冬瓜、梅、柚子
湯引きした鱧は、夏の椀物らしい軽やかさを持ちながら、出汁の中でしっかりと存在感を見せてくれます。
梅の酸味を少し添えることで、暑い時期にも口に運びやすく、椀全体にきれいな印象が生まれます。
冬瓜は、淡い色合いとみずみずしさで、お椀に涼やかな表情を添えてくれる食材です。
奥に入れた焼き茄子は、夏野菜らしいやわらかさと香ばしさを持ち、鱧や冬瓜とはまた違う味わいの重なりを作ります。
そこへ柚子の香りが加わることで、最後のひと口まで夏らしい余韻が続きます。
それぞれの素材を強く主張させるのではなく、出汁の中でひとつの椀物としてまとまることを大切にしています。
鱧、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子。夏の素材と香りが少しずつ重なり、懐石料理の流れの中で、次のお料理へ心地よくつながっていきます。
出汁を引くこと
安来家では、出汁の引き方をなによりも大切にしています。すべてのお料理の味が決まると言っても言い過ぎではないほど、出汁は日本料理の土台になるものです。
椀物では、その大切さが特にはっきりと表れます。
具材の香りや食感を受け止めながら、主張しすぎず、けれど物足りなくならない。
鱧、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子のひとつひとつが自然につながるように、出汁が全体を支えています。
毎日同じように見える仕事でも、出汁はその日の温度や素材の状態に向き合いながら引いています。
安来家では、毎日大事に、丁寧に丁寧に出汁を引き、その日の献立へつなげています。
出汁の香りがきれいに立つと、椀物の印象だけでなく、その後に続くお料理の感じ方にも自然な流れが生まれます。
だからこそ、安来家では日々の基本の仕事を大切にし、季節の素材を受け止める出汁を丁寧に引いています。
7月の懐石料理では、盛夏へ向かう季節に合わせたお料理をご用意しております。夏の鱧のお椀を通して、出汁の香りと、旬の組み合わせをゆっくりお楽しみくださいませ。
