月とうさぎ、ススキを添えて。10月の懐石料理の先付
10月に入り、朝晩はずいぶん涼しくなってまいりました。
日中との空気の違いに、秋が深まってきたことを感じます。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
大阪・阿倍野の安来家では、秋本番を迎える今月、お月見をテーマにした先付をご用意しております。
お月様とうさぎ、そしてススキ。秋の夜の景色を思い浮かべながら、懐石料理の始まりを楽しんでいただければと思います。
今年の十五夜は9月25日でした。
お月見というと十五夜を思い浮かべる方も多いかと思いますが、10月にも「十三夜」という、月を愛でる日があります。
今年の十三夜は10月23日です。
十三夜は、旧暦の9月13日の夜に月を眺める、日本独自の風習とされています。
十五夜の「中秋の名月」に対して「後の月」とも呼ばれ、昔から、二つの夜の月を楽しんできました。
十五夜と十三夜の両方を見ると縁起がよいといわれ、どちらか一方だけを見ることを「片見月」と呼び、あまり縁起がよくないとする言い伝えもあります。九月と十月、二度にわたって秋の月を愛でる習わしには、季節をゆっくり味わう楽しみが感じられます。
安来家では今年、十月のお料理に、このお月見の趣を取り入れました。
空に浮かぶ月を眺めるように、まずは器の中の秋を楽しんでいただきたいという思いを込めております。

左上の器にご用意したのは、お月様に見立てた銀杏餅です。
その上には、長芋をうさぎの形に型取ってのせています。月とうさぎが寄り添う、小さなお月見の景色です。
銀杏餅の下には煮穴子を添え、白味噌の餡を敷いております。白味噌は、銀杏餅と相性のよい味わい。
銀杏餅に餡をからめ、煮穴子とともに召し上がっていただく一品です。
お月見を表した見た目と、お料理としての取り合わせ、その両方を楽しんでいただけましたら幸いです。
そして、右手前のガラスの器は、汲み上げ湯葉のあんかけです。
こちらは、湯葉の下に叩いた長芋を敷き、食感のアクセントを加えております。同じ長芋でも、銀杏餅の器ではうさぎの姿を表し、湯葉の器では食感を添える役割に。それぞれの一品に合わせた使い方で、お食事の楽しみを広げています。
上にはウニとカダイフをのせ、ススキを飾りました。月とうさぎの器に、ススキを添えた湯葉の器を取り合わせることで、お月見の風景を感じていただける先付にしています。
先付は、これから続く懐石料理の最初のお料理です。
ひと口召し上がる前に、器や盛り付けを眺めていただく時間も、日本料理の楽しみのひとつだと思っております。
「お月様の上にうさぎがいますね」「もうお月見の季節ですね」。
そんな会話が、お食事の始まりに生まれましたら嬉しく存じます。
九月の十五夜を楽しまれた方も、これから十三夜の月を眺めようとお考えの方も、十月の安来家で、お料理のお月見を楽しんでいただければと思います。
秋のひとときをゆっくりお過ごしいただけますよう、心を込めてご用意してまいります。
最後に、おせち料理のご案内です。安来家では、新しい年を迎えるおせち料理のご予約を承っております。
皆様のご健康とご多幸への願いを込め、一品ずつ丁寧にお作りいたします。
詳しくはおせち料理のご案内をご覧ください。お正月の食卓にも、安来家のお料理を添えていただけましたら幸いです。
