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安来家の7月の炊き合わせは、夏の定番「いもたこなんきん」に、冷たい旨味出汁のジュレをかけてお出ししています。

暑い日が続くなか、ひと口ごとに少しでも涼味を感じていただきたいと考えた、盛夏のひと品です。

2026年7月18日は、二十四節気の小暑を過ぎ、7月23日の大暑へ向かう頃。

夏の暑さがいよいよ深まる時季だからこそ、日本料理では味わいだけでなく、温度や盛り付け、器の中の表情にも涼を映します。冷たいものを心地よい冷たさのまま召し上がっていただくことも、季節のおもてなしのひとつです。

今回の炊き合わせでは、いも、たこ、なんきんに、冷たい旨味出汁をジュレにして重ねました。

さらりと流れる出汁とはまた違い、きらきらとしたジュレが素材の間に留まることで、涼しげな仕立てになります。

炊き合わせと一緒に、冷たい出汁の旨味をゆっくり味わっていただければと思います。

手前にはヤングコーンを置き、上には花穂紫蘇をあしらいました。ひとつの器の中に、炊き合わせ、ジュレ、夏のあしらいを合わせ、暑い季節にも箸を運びたくなるような一皿を心がけています。

見た瞬間の涼やかさから、口にしたときの冷たさ、出汁の余韻まで、7月らしさを感じていただけましたら幸いです。

仕出しでも、冷たいジュレをそのままに

このひと品で大切にしているのが、店内だけでなく、仕出し弁当や配達でも温度を意識することです。

安来家では「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」という思いで、一つひとつのお料理をお作りしています。

料理に合った温度も味わいの一部と考え、お届けする場面でも、その良さをできる限り損なわない方法を重ねています。

仕出しでは、お作りした料理をお届け先で召し上がっていただきます。

そこで大切になるのは、店内と同じ献立をご用意することに加え、お届けしたときにどのような状態であるかまで考えることです。冷たい料理を冷たい状態でお届けすることは、暑い季節には特に大切です。

今回のジュレにも、仕出し屋として「食べるときのおいしさ」を大切にしてきた安来家の姿勢が表れています。

とりわけ暑い時季のジュレは、時間とともに溶けやすいものです。

そのため、仕出しではできるだけ直前にジュレをかけ、なるべく溶けないよう工夫しています。

冷たい旨味出汁のジュレを選んだことだけでなく、いつかけるかまで考えること。

小さな違いではありますが、召し上がるときの涼味を守るために欠かせないひと手間です。

安来家は、仕出し屋として始まりました。

お店の懐石料理と仕出し弁当では、器やお届けの方法が異なりますが、召し上がる方に季節を感じていただきたいという思いは変わりません。店内でお出しする懐石と変わらぬものを仕出し弁当でもお届けできるよう、ジュレをかけるタイミングをはじめ、お届けする直前までできることを考え、これからも工夫と改良を重ねてまいります。

いも、たこ、なんきんの親しみのある取り合わせに、冷たい旨味出汁のジュレを添えた7月の炊き合わせ。

ヤングコーンと花穂紫蘇のあしらいとともに、安来家ならではの夏の涼味をお楽しみください。

店内のお席でも、仕出しのお届け先でも、暑い一日のひとときが少しでも涼やかなものになればうれしく思います。

7月の八寸は、七夕の献立として、笹をあしらい、露打ちをした器で夏らしく盛り付けました。

小暑を過ぎ、大暑へ向かう7月は、暑さが日ごとに深まる頃です。

食卓には、涼しさを感じる器づかいや、酸味、香り、みずみずしさがよく合います。

今回の八寸では、七夕の笹を添え、器に露を打つことで、見た目にも涼やかな印象を大切にしました。

ひと品ずつの味わいを楽しみながら、盛夏へ向かう季節の気配を感じていただける内容です。

白い器には、もずくと長芋と新生姜の酢の物を。

もずくの口当たりに、長芋のなめらかさ、新生姜の香りが重なり、暑い時期にもすっと箸が進む一品です。

左のガラスの器には、きゅうりとじゅんさいのゼリー寄せをご用意しました。

透明感のある器とゼリー寄せの涼しげな表情が、七夕の献立にやさしい涼を添えています。

その下には、う巻を盛りました。いつものだし巻き卵を、2026年7月26日の土用の丑の日にちなんで、今回はうなぎを巻いた仕立てにしています。夏の献立の中に、土用の丑の日を少し先取りする楽しさを加えた一品です。

七夕の八寸に、夏の味を少しずつ

右側の木の板の上には、車海老、アスパラガス、鱧の子の卵寄せを合わせた三色物を置きました。

色合いの違う素材を並べることで、八寸らしい華やかさが生まれます。

横には、鯵のゆず味噌チーズを。アジをフライにし、その上にゆず味噌とモッツァレラチーズをかけて焼いています。和の香りとチーズのまろやかさが重なり、ひと口の中に少し意外性のある味わいが広がります。

真ん中には、さつまいものレモン煮を添えました。ほのかな甘みとレモンの香りが、献立の中でやわらかな箸休めになります。左下には、いちじくの生ハム包みを。いちじくの甘みと生ハムの塩味が寄り添い、夏の八寸に明るい印象を加えてくれます。

右下には、水茄子の小袖寿司をご用意しました。

ぬか漬けにした水茄子を小袖寿司にし、上にはポン酢で和えた鰹節と奴葱を飾っています。水茄子のみずみずしさに、鰹節と奴葱の香りが添わり、最後まで軽やかに召し上がっていただけます。

八寸は、献立の中で季節の挨拶のような役割を持つお料理です。

器、盛り付け、色合い、香り、行事の気配を少しずつ重ねながら、その月らしさを一皿に込めていきます。

今回は、七夕の笹と露打ちの涼やかさに、酢の物、ゼリー寄せ、う巻、三色物、揚げ焼き、煮物、寿司を取り合わせ、7月らしい夏の八寸に仕立てました。

安来家では、季節の懐石料理として、その時期に合わせた献立をご用意しております。

7月の八寸では、七夕の趣と土用の丑の日を思わせるう巻を通して、夏の味わいをゆっくりお楽しみくださいませ。

7月の椀物として、夏らしい鱧のお椀をご用意いたしました。

2026年は7月7日に小暑、7月23日に大暑を迎えます。梅雨明けの気配から盛夏へ向かう頃は、暑さの中にも、香りや余韻の涼しさがうれしい季節です。

椀物は、献立の中でも出汁の味わいをまっすぐに感じていただく一品。7月は、鱧を中心に、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子を合わせ、夏の空気を映すお椀に仕立てました。

お椀の奥には焼き茄子を入れ、手前には湯引きした鱧を置いています。上には冬瓜をのせ、鱧の上には梅を添えました。

仕上げには振り柚子をし、蓋を開けた瞬間にふわりと香りが立つようにしています。

椀物は、器の蓋を開ける一瞬も含めて味わっていただくお料理です。湯気とともに立ち上がる柚子の香り、出汁のあたたかさ、梅のほのかな酸味。

口に運ぶ前から、夏の献立へ自然に気持ちが向かうような一椀を目指しています。

鱧、冬瓜、梅、柚子

湯引きした鱧は、夏の椀物らしい軽やかさを持ちながら、出汁の中でしっかりと存在感を見せてくれます。

梅の酸味を少し添えることで、暑い時期にも口に運びやすく、椀全体にきれいな印象が生まれます。

冬瓜は、淡い色合いとみずみずしさで、お椀に涼やかな表情を添えてくれる食材です。

奥に入れた焼き茄子は、夏野菜らしいやわらかさと香ばしさを持ち、鱧や冬瓜とはまた違う味わいの重なりを作ります。

そこへ柚子の香りが加わることで、最後のひと口まで夏らしい余韻が続きます。

それぞれの素材を強く主張させるのではなく、出汁の中でひとつの椀物としてまとまることを大切にしています。

鱧、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子。夏の素材と香りが少しずつ重なり、懐石料理の流れの中で、次のお料理へ心地よくつながっていきます。

出汁を引くこと

安来家では、出汁の引き方をなによりも大切にしています。すべてのお料理の味が決まると言っても言い過ぎではないほど、出汁は日本料理の土台になるものです。

椀物では、その大切さが特にはっきりと表れます。

具材の香りや食感を受け止めながら、主張しすぎず、けれど物足りなくならない。

鱧、焼き茄子、冬瓜、梅、柚子のひとつひとつが自然につながるように、出汁が全体を支えています。

毎日同じように見える仕事でも、出汁はその日の温度や素材の状態に向き合いながら引いています。

安来家では、毎日大事に、丁寧に丁寧に出汁を引き、その日の献立へつなげています。

出汁の香りがきれいに立つと、椀物の印象だけでなく、その後に続くお料理の感じ方にも自然な流れが生まれます。

だからこそ、安来家では日々の基本の仕事を大切にし、季節の素材を受け止める出汁を丁寧に引いています。

7月の懐石料理では、盛夏へ向かう季節に合わせたお料理をご用意しております。夏の鱧のお椀を通して、出汁の香りと、旬の組み合わせをゆっくりお楽しみくださいませ。

7月の先付として、とうもろこしの擦り流しをご用意いたしました。

夏のはじまりに、さっぱりと召し上がっていただけることを大切にしながら、

ひと口の中にきちんと満足感が残るよう考えた一品です。

2026年は7月2日が半夏生、7月7日が小暑です。

夏至を過ぎ、七夕や小暑を迎える頃は、湿り気のある暑さから少しずつ盛夏の気配へと移っていきます。

冷たさや軽やかさがうれしい時期ですが、ただ軽いだけではなく、

食事のはじまりとして印象に残る味わいも大切にしたいところです。

今回の擦り流しは、とうもろこしを主役にした、涼やかな先付です。

器の蓋を開けたときに、夏らしい色の現れ、これから始まるお食事へ自然に気持ちが向かうような一皿を目指しました。

真ん中には、汲み上げ湯葉を合わせています。

とうもろこしのやさしい風味に、湯葉のなめらかな口あたりが重なり、軽やかでありながら、

すっと消えてしまわない余韻が生まれます。

夏の先付として重くなりすぎないようにしながら、ひと口ごとの厚みも感じていただける組み合わせです。

とうもろこしの擦り流しは、なめらかさの中に素材の甘みをどう残すかで印象が変わります。

今回は、口あたりをやさしくしながらも、中央に湯葉を置き、炙った帆立やとうもろこしを合わせることで、

香りと食感に小さな起伏を持たせました。

帆立は炙って香ばしさを添えました。

叩いたオクラの青みと、炙ったとうもろこし、ミニトマトを合わせることで、色合いにも味わいにも変化が出ます。

とうもろこしの擦り流しの中に、湯葉、帆立、オクラ、炙ったとうもろこし、ミニトマトが少しずつ表情を加え、最後まで単調にならない先付に仕立てています。

夏の料理は、涼しさだけに寄せると物足りなくなり、力強くしすぎると食事のはじまりには重たく感じられることがあります。今回は、とうもろこしのやわらかな甘みを軸に、湯葉のなめらかさ、帆立の香ばしさ、オクラの涼やかな口あたりを合わせ、夏の入口らしい軽さと満足感の両方を大切にしました。

先付は、会席の最初に季節をお伝えするお料理でもあります。7月の空気、器を開ける楽しみ、口に含んだときの温度や香り。そのひとつひとつが、後に続くお料理への流れを作ります。安来家では、月ごとの献立の中で、その時期に心地よい味わいを考えながらお料理をご用意しています。

また、安来家では店内でのお食事に加え、仕出しも承っております。ご家庭でのお集まり、法事や慶事のお席など、用途に合わせたお料理についてもご相談ください。

来店での御料理と変わらない季節のお料理を、ご予定に合わせてお届けできるようご用意いたします。

なお、安来家では大阪市プレミアム付商品券2026もご利用いただけます。

ご利用方法や最新のお知らせをご確認のうえ、お会計時にお声がけください。

暑さが深まっていく7月、まずは涼やかな先付から、季節の味わいをゆっくりお楽しみくださいませ。

7月に入りましたが、今回は6月の椀物をご紹介いたします。

6月は水無月。暦の言葉や季節の名を料理に映しながら、その時期ならではの一椀としてご用意したお料理です。

椀の上に配したのは、水無月に見立てた水無月豆腐です。

胡麻豆腐をねっとりするまでよく練り、小豆をのせています。

胡麻豆腐のなめらかさと、小豆の表情を合わせることで、水無月らしい趣を椀物の中に取り入れました。

水無月豆腐は、椀物の中で静かな存在感を持たせています。

よく練った胡麻豆腐のねっとりとした口あたりに、小豆が加わることで、水無月らしい余韻が残ります。

ひとつの見立てを、形だけでなく食感にもつなげることを意識したお料理です。

手前の白いものはアイナメです。関西ではアブラメと言ったほうが馴染みがある方も多いかもしれませんね。

アイナメは葛叩きにしており、口に含むと柔らかくほどけるような食感になります。

葛をまとわせることで、魚の身がやさしく包まれ、椀の中でも穏やかな存在感を出してくれます。

そこに小メロンを添え、上には茗荷と木の芽をあしらいました。

小メロンの淡い青み、茗荷の香り、木の芽の清々しさが加わることで、梅雨から夏へ向かう頃の涼やかさが生まれます。

具材の組み合わせだけでなく、香りや口あたりも含めて、季節の流れを一椀の中で感じていただけるように考えています。

椀物は、ひとつの器の中で料理の流れを作るお料理です。

主役になるもの、香りを添えるもの、季節の色を見せるものがそれぞれの役割を持ち、全体として一椀の景色になります。

今回の椀物では、水無月豆腐とアイナメを中心に、小メロン、茗荷、木の芽が夏へ向かう軽やかさを添えています。

2026年は7月2日が半夏生、7月7日が小暑です。夏至を過ぎ、小暑へ向かうこの頃は、湿り気のある暑さの中にも、少しずつ盛夏の気配が立ち上がってきます。6月の水無月の名残を残しながら、7月の入口へと移る時期にふさわしい椀物としてご用意しました。

7月に入ってから6月の椀物を振り返ると、ひと月ごとの料理が、暦とともに少しずつ移っていくことを改めて思います。

献立は過ぎた季節を惜しむだけでなく、次の季節へ橋をかけるものでもあります。

懐石料理では、旬の食材を使うことだけでなく、その月の空気や暦の節目をどう料理へ込めるかも大切にしています。見立て、器、香り、食感の重なりがあることで、ひと口ごとに季節の話が少しずつ広がります。

安来家では、これからも季節を捉える御料理をお届けしてまいります。

お料理の内容は月ごとの献立やその日の仕立てにより変わります。

ご来店の際は、その時期ならではの一品をゆっくりお楽しみください。

ご予定に合わせたお食事についても、お気軽にお尋ねくださいませ。

なお、安来家では大阪市プレミアム付商品券2026もご利用いただけます。

ご利用方法や最新のお知らせは公式サイトをご確認のうえ、お会計時にお声がけください。

6月の先付として、夏越しの祓と茅の輪くぐりを題材にした一品をご用意しております。

写真のしつらえは、半年の節目に行われる夏越しの祓を思わせるものです。

料理そのものだけでなく、器の中に季節の行事や祈りの気配をそっと映すことも、日本料理の楽しみのひとつです。

夏越しの祓は、6月末に行われる大祓のひとつです。神社本庁の説明では、大祓は日々の暮らしの中で身についた穢れや災厄の原因となるものを祓い清める神事で、6月の大祓を夏越の祓、12月の大祓を年越の祓と呼びます。

夏越しの祓では、茅や藁を束ねた茅の輪を神前に立て、これをくぐって無病息災を祈る神社も多くあります。

茅の輪くぐりは、一般には左、右、左と八の字を描くように三度くぐる作法が知られています。

ただし、細かな作法は神社によって異なります。由来としては、旅の神を貧しいながらも手厚くもてなした蘇民将来の故事と結びつけて語られることが多く、茅の輪は災厄を避け、残り半年を健やかに過ごす願いを込めたものとして受け継がれてきました。

また、夏越しの祓では、人の形をした紙の形代に穢れを移して祓う風習や、京都を中心に水無月という和菓子をいただく習わしも知られています。いずれも、暑さが本格化する前に身を清め、これからの季節を無事に過ごしたいという思いにつながっています。日本料理でも、こうした行事の背景を料理の形や器使いに映すことで、季節をより身近に感じていただけます。

今回の先付では、その茅の輪を料理のしつらえに取り入れています。6月は梅雨入りへ向かい、蒸し暑さも増していく季節です。その前に一度、心身を清め、夏を無事に越すことを願う夏越しの祓。そうした季節の意味を、最初の一皿に込めました。

左の器は、手前に甘鯛の酒蒸し、奥に茄子のお浸しを盛っています。甘鯛の上には鱗揚げを添え、やわらかな酒蒸しの口当たりに、香ばしさと軽い食感を重ねました。真ん中には、千切りにした生姜を揚げています。生姜の香りは、梅雨どきの料理にすっきりとした余韻を添えてくれます。

甘鯛の酒蒸しは、先付として重くなりすぎないよう、しっとりとした味わいを大切にしています。そこへ鱗揚げの香ばしさを添えることで、同じ甘鯛の中にもやわらかさと軽い歯ざわりが生まれます。茄子のお浸しは、涼を感じる一品として、6月の湿り気のある空気に寄り添います。揚げた千切り生姜は、香りで全体を引き締める役割です。

右の器は、島根のブランドアジ「どんちっちアジ」の薬味巻きです。どんちっちアジは、島根県西部沖で漁獲され、浜田に水揚げされるマアジのうち、平均脂質10%以上、サイズ50g以上などの基準を満たしたものとされています。脂ののったアジを薬味で巻くことで、旨みの厚みがありながら、先付として重くなりすぎない味わいになります。

どんちっちアジは脂ののりが特徴ですが、薬味を合わせることで、香りと後口の軽さが加わります。先付は、これから始まる料理の入口です。最初の一皿で強く押しすぎず、それでいて季節の印象が残るよう、甘鯛、茄子、生姜、どんちっちアジをそれぞれ違う表情で組み合わせました。

夏越しの祓は、過ぎた半年を振り返り、これからの半年を健やかに過ごすための節目です。安来家の先付でも、その行事をただ飾りとして使うのではなく、食材の香り、口当たり、涼しさとともに、6月ならではの祈りと季節の移ろいを感じていただけるように考えました。

阿倍野の日本料理 安来家では、季節の懐石料理を、その時期の行事や旬の食材に合わせてご用意しています。水無月の先付として、夏を迎える前のひとときをお楽しみいただければ幸いです。

前回に続き、安来家の茶懐石出張料理から、茶懐石の流れを少しご紹介いたします。

茶懐石は、お茶をおいしくいただくために用意される食事であり、華やかさだけを重ねる料理ではありません。

茶事の中では、飯、汁、向付から始まり、椀物、焼物などへ進んでいく流れがあり、席や流派によって細かな違いはありますが、一品ごとに出される意味があります。

前回は、最初の向付と一文字飯、汁物についてご紹介しました。

今回は、その続きとして椀物と飯器を中心に取り上げます。

出張料理では、店内とは違う場所で料理をお出ししますが、茶事の進行に合わせて器や飯器を用意し、次の料理へ自然につながるように支度を進めています。

椀物です。今回は蓬豆腐にアイナメを合わせ、周りにはじゅんさいをあしらい、吸い口には木の芽を添えました。茶懐石では、最初の飯、汁、向付に続いて、椀盛、あるいは煮物椀と呼ばれる椀物が出されます。旬の具材と出汁の香りをひとつの椀の中で味わう料理で、茶懐石の中でも大切な位置にある一品です。

ここでいう椀物は、最初に出る汁とは役割が異なります。はじめの汁は、飯や向付とともに席の入口を作るもの。

椀盛はその後に、季節の素材を椀の中心に据え、出汁の澄んだ香りや椀種の口当たりを味わっていただく御料理です。

茶懐石の流れを写真で追うと、同じ「汁気のある料理」に見えても、それぞれ置かれる場面が違うことがわかります。

蓬豆腐のやわらかな青み、アイナメの白身、じゅんさいの涼やかな口当たり、木の芽の香りが重なることで、5月下旬らしい初夏の気配が椀の中に入ります。2026年5月29日は、二十四節気でいうと小満の期間にあたります。草木が勢いを増し、季節が満ちていくころ。椀物にも、そうした時期の軽やかさと、これから水無月へ向かう涼しさを少し含ませています。

続いてはは飯器です。茶懐石では、飯は最初に少量だけ盛られ、その後、席の進みに合わせて飯器が出されます。

ご飯は最後にまとめて出すものではなく、茶懐石の始まりから席の中にある大切な存在です。

今回は、1回目の飯器と2回目の飯器で内容を変えてご用意しました。

1回目の飯器としてお出しした新生姜ご飯です。新生姜の香りは、初夏の料理に軽さを添えてくれます。

椀物の後にご飯の香りが入ることで、席の印象が少し変わり、次の料理へ向かう間合いも生まれます。

2回目の飯器としてご用意した白いご飯です。あえて白いご飯に戻すことで、料理の流れの中に落ち着きが出ます。少し水分が多いご飯というのも茶懐石ならではの特徴ですね。

飯器を二度に分け、内容を変えることで、同じ「ご飯」であっても席の中で受け取る印象は変わります。1回目の新生姜ご飯は、初夏の香りを感じていただく趣向として。2回目の白いご飯は、料理を受け止める余白として。茶懐石では、量を多くすることよりも、どの場面で何を出すかが大切になります。

写真で追っていくと、椀物や飯器が単独の料理としてではなく、茶事の時間の中で前後の料理と響き合っていることも見えてきます。ひとつの椀、ひとつの飯器にも、季節と順序の両方が込められています。

茶懐石には、細かな決まりや順序があります。ただし、決まりを見せるためだけの料理ではなく、お茶へ向かう時間を心地よく進めるための料理でもあります。安来家では、茶懐石や出張料理について、内容や人数、席の流れに合わせてご相談を承っております。

茶懐石の一品一品がどのように席の時間をつくっていくのか、少しでも伝われば幸いです。

写真は、席のはじめにお出しした向付、一文字飯、汁物です。

茶懐石では、料理がただ順番に出るのではなく、飯、汁、向付から始まる流れそのものに意味があります。最初のひと揃いは、これから続く時間の入口でもあり、季節の気配を静かに伝える場面でもあります。

5月21日から5月31日までの10日間、安来家では茶懐石の出張料理をさせていただいております。

茶懐石の出張料理は年に数回ございますが、今回は簡易的な点心ではなく、人数は少ないながらも本格的な懐石料理としてのお支度です。

今年の5月21日は、二十四節気の「小満」にあたります。草木が勢いを増し、天地に生命が満ち始めるころとされ、5月下旬から月末にかけては、初夏の明るさと、梅雨を前にした湿り気が少しずつ重なっていきます。皐月の茶事として、そうした時期の空気を料理の中に映せるよう、献立の始まりを考えました。

茶懐石は、お茶をいただく前の食事として、空腹を満たすだけのものではありません。量を重ねて豪華に見せるよりも、飯と汁、向付から始まり、席の進み方に合わせて少しずつ味わいを移していく料理です。出張料理であっても、その考え方は同じです。場所が変わっても、茶事の時間に合わせ、料理が急ぎすぎず、かといって間延びしないように、一品ごとの役割を意識してお出ししています。

向付は、初カツオのたたきです。初カツオは初夏を告げる味として古くから親しまれてきました。皐月の茶事の始まりに、重たくなりすぎず、きりりとした印象を添えてくれる一品です。向付は、席のはじめに出る料理でありながら、強く主張しすぎるものではありません。飯と汁物のそばに置かれることで、懐石の始まりにふさわしい落ち着いた景色になります。

汁物は、あさりの袱紗仕立てです。あさりのうまみを生かしながら、袱紗仕立てならではのやわらかな口当たりで、皐月の茶事に寄り添う一椀としてご用意しました。汁物は、味の濃淡だけでなく、温かさや香り、口に入ったときのほどけ方まで含めて、席の流れを作る大切な役割があります。

一文字飯、向付、汁物が並ぶと、料理の華やかさだけではなく、茶懐石らしい静かな始まりが見えてきます。人数が少ない席では、一品ごとの距離も近くなります。そのぶん、器を前にしたときの印象や、最初のひと口の季節感が、その後の時間に自然とつながっていきます。

出張料理では、店内とは違う場所でお料理をお出ししますが、茶事の中で料理が置かれる意味や順番は変わりません。お客様の人数、席の流れ、料理をお出しする場所の環境によって、準備の仕方や運び方は変わります。それでも、簡易的にまとめるのではなく、茶懐石としての形を保ちながら、その場に合わせて無理のない流れになるように考えています。

今回のように人数が少ない茶事では、料理と向き合う時間もより静かになります。ひと皿を大きく見せるより、ひと口ごとの余韻や、次の料理へ移る間合いが大切になります。初カツオの向付で季節の輪郭を出し、あさりの袱紗仕立てで椀物のやわらかさを添えることで、皐月の終わりらしい軽やかさと落ち着きが同じ席に並ぶように意識しました。

5月も終わりに近づき、皐月から水無月へ移るころ。

初カツオの向付、あさりの袱紗仕立て、一文字飯から始まる今回の茶懐石が、季節の移ろいを感じていただくひとときになれば幸いです。

安来家では、季節の懐石料理や茶懐石の出張料理について、内容や人数に合わせてご相談を承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。

五月の第二日曜日を過ぎ、街の空気にも少し落ち着きが戻ってきました。

母の日のためにご家族で集まられた方もいれば、連休明けの慌ただしさの中で、少し遅れて感謝の席を用意される方もいらっしゃると思います。暦の上では立夏を迎え、春の名残と初夏の気配が重なるころです。

母の日当日はたくさんのお祝いの御料理をお作りさせて頂きました。

お祝いの席、そしてその空間でお喜びいただけること、何より嬉しく思います。

心より感謝申し上げます。

阿倍野の安来家では、この時期は季節の切り替わりを意識しながら、店内の懐石料理や仕出し料理に初夏の気配を映しています。

華やかに盛り込むだけではなく、食べ終えたあとにすっと気持ちが落ち着くような料理。初夏の日本料理には、そうした静かな心地よさがよく合います。

母の日の余韻と、家族の食卓

母の日は、特別な贈り物だけの日ではありません。

日ごろの感謝を、家族で囲む食卓の中で伝える日でもあります。外でゆっくり食事をされる方、ご自宅で仕出し料理を囲まれる方、それぞれに過ごし方があります。

安来家では、そうしたご家族の時間に合わせて、料理の流れや量、召し上がる方の年齢層にも気を配ります。ご年配の方がいらっしゃるお席では食べやすさを考え、お子様がいるお席では場が明るくなるような見え方も大切にします。

料理は、ただお腹を満たすためだけのものではありませんので、集まった方の会話が自然にほどけるように、そっと支える役割もあります。

立夏を過ぎたころの懐石

立夏を過ぎると、暦の上では夏に入ります。

とはいえ、五月中旬はまだ春のやわらかさも残る時期です。強い涼味に寄せすぎるには少し早く、春の名残だけでは季節が止まってしまいます。

この頃の懐石では、軽やかさと落ち着きの間を探るように献立を考えます。出汁の旨みを土台にしながら、香りは重くしすぎず、口当たりはやさしく。季節が一段進んだことを、無理なく感じていただけるように仕立てます。

安来家では、料理によって鮪節と真昆布の一番出汁を使います。出汁の輪郭がはっきりしていると、椀物や炊き合わせの印象も自然にまとまります。派手に主張するものではありませんが、料理全体の芯になる大切な仕事です。

季節を伝えること

日本料理では、料理そのものだけでなく、器や流れも季節を伝える大切な要素です。

五月中旬は、色を強く出しすぎるよりも、青みや余白を生かした見せ方がよく合います。端午の節句の力強さが過ぎたあと、少し落ち着いた初夏の気配を、器の色合いや盛り付けの間合いで感じていただくような考え方です。

懐石は、一品だけで完結するものではなく、先付から椀物、八寸、炊き合わせへと進む中で、味の濃淡や温度、明るさを少しずつ変えていきます。

食べ進めるうちに、春の余韻から初夏の軽やかさへ自然に移っていく。そうした流れを作ることも、安来家が大切にしている仕事のひとつです。

仕出しにも、季節の加減を

店内でのお食事だけでなく、仕出し料理にも季節の考え方があります。

仕出しでは、冷めても味がぼやけないように、汁気や詰め方を調整します。配達の時間、召し上がるまでの間、蓋を開けたときの見え方。そうした点を考えながら、料理を箱の中に収めていきます。

五月は、ご家族のお祝い、法事、会社でのお食事など、さまざまな集まりが重なる時期です。重たすぎず、けれど簡素になりすぎない。初夏の仕出しには、そのような加減が合うように思います。

ご自宅でゆっくり過ごしたい日や、会社で大切なお客様を迎える日にも、御料理で季節を感じていただければ幸いです。

阿倍野で、初夏のひとときを

母の日が過ぎ、連休の余韻も少しずつ日常へ戻っていくころ。

こうした時期だからこそ、ゆっくりと食事をする時間が、気持ちを少し軽くしてくれることがあります。阿倍野の安来家では、季節の流れを料理に映しながら、店内での懐石料理や仕出し料理をご用意しています。

大切な方とのお食事、ご家族の集まり、少し改まった会食など、ご予定に合わせたお料理については、いつでもお気軽にご相談くださいませ。

桜の盛りも過ぎ、阿倍野の街でも、歩く人たちの装いも少しずつ軽やかになってきました。

安来家では、月も半分を過ぎると、来月の献立も考え作り始めます。

「春の名残」と「初夏の走り」をどう日本料理として映し出すか、毎日頭を悩ませながら、でも楽しく献立を練っています。

懐石料理の最後を締めくくる「お食事」。

お酒を楽しんだ後でも、すっとお腹に収まるような、それでいて心の温度が少し上がるような一品をお出ししたい。

そんな想いで今月ご用意しているのが「生湯葉の葛あんかけごはん」です。

澄んだ出汁と「吉野葛」が作る、口当たりの良さ

このお料理の命は、「あん」の透明感と喉ごしにあります。

一般的にあんかけには片栗粉を使うことも多いと思います。

安来家では「吉野葛」を使います。片栗粉は粘りが重かったり、少し濁りが出てしまいます。

一方、葛は特有の滑らかさがあり、何より出汁の表情を美しく透かしてくれるんですね。

そのベースとなる出汁にも、少し工夫をしています。

今回は力強い鰹節(かつおぶし)ではなく、あえて「鮪節(まぐろぶし)」と真昆布でひいた一番出汁を選びました。鮪節は鰹に比べて血合いが少なく、非常に上品で澄んだ甘みが出るのが特徴です。湯葉という繊細な素材の味を邪魔せず、そっと寄り添うような出汁でなければならないと考えたからです。

一度「炊く」ことで生まれる、湯葉の重なり

主役の湯葉は、上質な生湯葉を仕入れています。

そのまま食べても美味しいものですが、ごはんに乗せるとなると、もう一手間が必要です。

まず生湯葉を薄い出汁でさっと一度炊き上げます。こうすることで、湯葉の一枚一枚に出汁の旨みが染み込み、ごはんと一体になった時の馴染みが格段に良くなります。

炊いた湯葉は、お箸で掬いやすい適度な大きさに切り分け、先ほどの鮪節の出汁と合わせます。

吉野葛でとろみをつけたら、炊き立ての白いごはんの上へ。

最後に添えるのは、三つ葉と、少し多めにすりおろした「生姜」です。

この生姜が、実は名脇役でして。葛あんのまろやかな甘みの中に、生姜のピリッとしたパンチが加わることで、味がぐっと引き締まります。湯葉の優しさと生姜の刺激、この対比が春の終わりの少し気だるい体には心地よく響くと思います。

脇を固める、香ばしい味噌汁と香の物

お食事には、もちろんお味噌汁と香の物を添えています。

安来家のお味噌汁は、実は毎月こっそりと具材を変えているんですよ。

今月は、お豆腐と葱、そして「香ばしく焼いた薄揚げ」を入れています。

揚げを一度網で焼いてからお汁に入れることで、お椀の蓋を開けた瞬間に、ふんわりと香ばしさが広がります。

ほんの些細なことですが、この「ひと手間」が、最後の一口まで楽しんでいただくためのこだわりです。

添えられた香の物と一緒に、温かいうちにお召し上がりください。

出来立ての景色、ご来店で

実はこの「湯葉あんかけごはん」、お店でお食事をされるお客様限定となります。

安来家では阿倍野を中心に仕出し配達も承っておりますが、このお料理は配達でお届けすることができません。

どうしても時間が経つと、ごはんがあんの水分を吸ってしまい、独特のさらりとした食感が損なわれてしまうからです。

「一番美味しい瞬間を、そのまま召し上がっていただきたい」

そんな理由から、配達の場合はお寿司をご用意させていただき、このあんかけごはんは、お座敷やイス席でゆっくりとお過ごしいただくお客様へのみお出ししています。

春の光が差し込む個室で、最後の一匙までゆっくりと。

安来家でのひとときが、皆様にとって心解けるものになれば、これほど嬉しいことはありません。

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