阿倍野・安来家のおせち料理 ― 一段重に宿る技と季節の物語
11月も後半へと差しかかり、朝の空気はひんやりと冬の気配を帯び、落ち葉は色づき、季節がゆっくりと秋から冬へと移ろい始めました。
一年の終わりを感じるとともに、阿倍野・安来家の厨房でも「いよいよおせち料理の季節だな」と実感する日々です。
一年を締めくくる特別な日本料理として、そして懐石料理の集大成として、今年も心を込めて準備を進めております。
店内では12月25日まで、月替わりの会席料理・懐石料理をお楽しみいただけます。
旬の移ろいを器の上に写す日本料理ならではの世界を、どうぞ残りの二ヶ月も存分に味わっていただければ幸いです。

■ おせち料理・一段重の魅力
さて、おせち料理のご紹介も残すところ「一段重」と「お一人様用」の二種類となりました。
今回は、一段重についてご案内いたします。
世間一般では、一段重のおせちは仕切りが多く、見た目は華やかでも実際に食べてみると量が控えめだったり、「少し物足りない」という声を聞くこともあります。
しかし、安来家のおせち料理をご注文くださったお客様ならご存じの通り、当店のおせちは“ぎゅうぎゅう“に詰まっています
仕出し料理・会席弁当を日々お作りしている職人として、詰め方にも工夫があり、
ぎっしりと詰まりながらも品があり、食材同士が喧嘩しないよう、一つひとつの調理法と味わいを調整しています。
また、店内で提供する日本料理と異なり、仕出しやおせち料理は「時間が経っても美味しく食べられるか」がとても重要です。
その点、安来家では日頃から仕出し懐石を作り続けてきた経験があり、その技術がおせちにも生かされています。
冷めても美味しい、時間を経て旨味が落ち着く――その考え方こそが当店の強みです。
■ 一段重に詰めた料理の数々
まず、4種類すべてのおせちに入る「車海老旨煮」。
赤く仕上げた海老は、おせちの象徴であり、食卓を華やかに彩る欠かせない食材です。
左上には焼き物の鰆味噌漬。
味噌漬にすることで冷めても美味しく、旨味が凝縮します。
軽く温めていただければ、まるで焼き立てのように香りが立ち、ふっくらとした身をお楽しみいただけます。
その下には、鰆よりひと回り小さなサゴシの昆布締め生ずし。
昆布締めの旨味が甘酢と合わさり、噛むほどに優しい味わいが広がる一品です。
さらに酢の物としてサーモンの砧巻きを。
大きな聖護院かぶらを薄く桂むきにし、甘酢でしっとりと仕上げた皮でスモークサーモンを巻き込んだ華やかなお料理です。
紅白の色合いが、新年の祝い膳にふさわしい華やぎを添えます。
左下には数の子といくらの味噌漬。
いくらは年々価格が高騰し、本年はこれまでにないほど厳しい価格状況でしたが、工夫を重ねなんとか今年も変わらずご提供できる運びとなりました。
やはりいくらが入ると、おせちの豪華さが一段と増し、私自身も嬉しく思います。
■ 価格据え置きに込めた想い
昨今の物価高騰は本当に大きな影響があり、発表した「昨年と価格変わらず」という言葉の重さに内心大きく悩みました。
しかし安来家には、仕出し、日本料理、懐石、茶懐石と多岐にわたる経験と技法があります。
それらを総動員し、工夫と努力を積み重ねることで、なんとか価格を据え置くことができました。
それはすべて、
「一年の感謝を込めて作るのがおせち料理」
という想いがあるからです。
一年の締めくくりに、最高の御料理で喜んでいただきたい。
その気持ちを胸に、職人一同、今年も心を込めて仕上げてまいります。
■ ご予約受付中です
おせち料理は現在もご予約を承っております。
店頭はもちろん、お電話でもお申し込みいただけますので、お気軽にお問い合わせください。
阿倍野で日本料理・懐石料理・仕出し料理を手がける安来家ならではのおせち。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。









