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生後100日のお食い初めや、お宮参り、初節句。

赤ちゃんが生まれると、ご家族やご親族が集まる大切な日がいくつもやってきます。

阿倍野にある安来家でも、そうした節目の日のお食事を用意することがよくあります。

朱色の器に並ぶ、お食い初め膳

お食い初めのお祝いでは、赤ちゃんのための専用の御膳を整えます。

小さな朱色の器には、それぞれ意味を込めた品を並べています。

ふっくらと炊いたお赤飯、出汁を含ませたお野菜の炊き合わせ。そして、季節の八寸、お吸い物、中央には梅干しを添えます。

これらに加えて、お祝いの席に欠かせない、香ばしく焼き上げた尾頭付きの鯛と、丈夫な歯が生えるようにと願う「歯固めの石」も一緒にお出ししています。

初めてのお子様の場合、「どんな順番で食べさせる真似をすればいいのだろう」と迷うかもしれません。

だから、お食事と一緒に「儀式手順」を書いた紙をお渡ししています。

その手順を見ながら、ご家族で順番にお箸を運び、和やかな時間を過ごしてもらえたらと思います。

お店のお座敷と、ご自宅への配達

お食い初めのお祝いは、お店にご来店いただき、個室のお座敷でゆっくりと懐石・会席料理を召し上がる方が多いです。

ただ、まだ小さな赤ちゃんを連れての外出は、少しの荷造りや移動だけでも大変なものです。

だから、無理をせずご自宅で過ごしたいという方には、仕出し料理として配達でお届けしています。

大人の皆様には、お店と同じ味を仕切りのある器に詰めた「松花堂弁当」を用意します。

どちらでもお好きな方をお選びいただけます。お家ではもちろん、ご来店でのお座敷も個室ですので、赤ちゃんが泣いてしまったりお昼寝をしたりしても、周りを気にせずにお食事ができます。

ご自宅のお鍋で、ふわりと立つ湯気

仕出しの配達の際、ひとつの工夫があります。

松花堂弁当にはお吸い物が付きますが、お出汁は最初からお椀に入れず、別の容器に分けてお渡ししています。

お食事の直前に、ご家庭のお鍋でそのお出汁だけをサッと温めてください。

そして、具材の入ったお椀に熱々のお出汁を張ってもらいます。ふたを開けると、ふわりと良い香りの湯気が立ち上ります。

ご自宅でも、日本料理の温かいものは温かいうちに、美味しくお召し上がりいただけます。

赤ちゃんを囲む日が、ご家族にとって心地よい思い出になるようお手伝いをします。

お店でのお食事も、お家へのお届けも。ご都合に合わせて、気軽にお電話でご相談ください。

三月も半ばを過ぎました。

お彼岸を迎え、お寺での法要のあとに皆様で食事をされる機会が増える時期です。

また、卒業式や入学式など、ご家族の節目も重なります。

ご自宅やお寺の控え室で、ゆっくりと食事を楽しみたい。

そんなお声をいただき、最近は仕出し料理の配達で阿倍野の街を車で走る日が多くなってきました。

ふたを開けて、春の景色を見る

いま安来家でお作りしているのは、桃の節句や春の訪れをテーマにした弥生の献立です。

お店でお出ししている懐石・会席料理の品々を、仕出しの器や折箱にも丁寧に盛り込んでいます。

たとえば、先付。蛤の殻を器に見立てて、赤貝とわけぎの酢味噌和えを盛りました。

その上には、梅の形に抜いた人参と、うぐいすをかたどった長芋を添えています。

隣の小さなぼんぼりの器には、土佐酢で和えた白魚を。

ふたを開けた瞬間、春の景色がパッと目の前に広がるように整えます。

八寸には、さよりの小袖寿司を入れました。

シャリには細かく刻んだ梅を混ぜ込み、仕上げに軽くレモンを絞っています。

ほんのりとした酸味が、春の気候に心地よく馴染みます。

手間をかけて、春の苦味を美味しく

春の食材は、ウドやセリ、若ごぼうなど、特有の苦味やアクを持つ野菜がたくさんあります。

ただ、そのままでは少し食べにくいものです。

なので、厨房での下処理にいつも以上に手間と時間をかけます。

丁寧にアクを抜き、じっくりと出汁を含ませる。

そうすることでえぐみが消え、春の野菜が持つ本当の美味しさと香りを味わうことができます。

新じゃが芋とうすい豆は裏ごしして、なめらかな擦り流しに。

桜鯛は道明寺蒸しにして、出汁で炊いた新玉葱と、香ばしく焼き色をつけたつぼみ菜を合わせました。

どれも、ひと手間を惜しまずに仕上げた日本料理です。

ご指定の場所へ、そのままの味を

お寺でのご法事の席や、ご自宅でのご卒業・ご入学のお祝い。

周りを気にせず、身内だけで静かに時間を過ごせるのが、仕出し料理の良さだと思います。

ご指定のお寺やご自宅まで、盛り付けが崩れないよう慎重にお届けします。

お料理の内容は、今回ご紹介した献立を中心に、ご予算に合わせてご用意します。

お弁当の形やお届けの時間など、わからないことがあれば気軽にお電話でお尋ねください。

少しずつ暖かくなる気候とともに。皆様の春の集まりに、お料理で華を添えられたらと思います。

お祝いやご法事など、ご自宅で人が集まる日。

食事の準備をどうしようかと、迷うことがあるかもしれません。

「仕出し料理を頼んでみたいけれど、どう注文すればいいのか分からない」

初めて安来家にお電話をいただく方から、そんなお声を耳にします。

今日は、私たちのお料理がご自宅に届くまでの様子や、ご注文の段取りについてお話ししようと思います。

お店と同じ味を、ふたつの箱で

お届けするのは、お店でお出ししている懐石・会席料理と同じものです。

ご用途に合わせて、ふたつの形を用意しています。

ひとつは、黒塗りの十字の仕切りがついた器におさめる「松花堂弁当」です。

もうひとつは、白や黒の木の箱に詰めた「折詰弁当」。

こちらは食後にそのまま片付けられる使い捨ての箱ですが、ふたを開けたときの華やかさは変わりません。

青々とした笹の葉を敷き、ツヤのあるお造りや、配達直前に揚げた天ぷらを並べる。

出汁を含んだ煮物や、季節を映したあしらいを、それぞれの空間にきちんと収めていきます。

仕出しお弁当のページ

厨房での確認と、玄関先での手渡し

お家でふたを開けたときに美味しく召し上がっていただけるよう、出汁の引き方や火の入れ方を細かく調整します。

そして箱に詰める時。

彩りのバランスは整っているか。味が移らないように隙間なく詰められているか。

最後は必ず私自身の目で盛り付けを確認し、味の最終チェックをしてから、そっとふたを閉めています。

準備が整うと、お店の名前を書いた車で阿倍野の街を出発します。

配達は、基本的には玄関先でのお渡しです。

ただ、ご要望がありましたら、お家の中まで運び、皆さまの座るテーブルに並べるところまで手伝います。

集まりの直前は何かと慌ただしいものです。手が離せない時は、遠慮なくお声がけください。

お電話でお聞きすること

ご注文は、お日にちの2日前までにお願いしています。

お電話をいただいた際、いくつかお伺いすることがございます。

まずは日時と配達先のご住所、そして人数。

次に、器の松花堂弁当にするか、箱の折詰弁当にするか。

折詰弁当をご希望の場合は、持ち運び用の袋が必要かどうかも確認しています。

また、苦手な食材やアレルギーの有無もお聞きします。

ご予算に合わせた内容の変更も承っていますので、気兼ねなくお伝えください。

(なお、配達の際は5%の配達料を頂戴しています)

ちなみに、お店にご来店いただく場合でも、ご法事のあとなどで「あまり時間がない」という方がおられます。

コースで順番にお出しする日本料理は、お昼の懐石でもどうしても1時間半から2時間ほどかかります。

お急ぎのときは、一度にすべてのお料理がそろう松花堂弁当をお選びいただくのも、スムーズに進めるひとつの方法です。

初節句やお宮参り、卒業や入学。あるいは、大切な方を偲ぶ日。

ご自宅での集まりの食卓を、少しだけ楽に、そして豊かなものにするためのお手伝いをします。

わからないことがあれば、まずは気軽にお電話でお尋ねください。

お話を伺いながら、ちょうどいい形を一緒に整えます。

3月の声を聞くと、吹き抜ける風が少しだけ柔らかくなったように感じます。

街を歩く人たちの足取りも、どこか慌ただしくなる季節ですね。

卒業式や進学、そして新しい環境への準備。

出会いと別れが交差するこの時期は、日々の生活がパタパタと音を立てて進んでいくようです。

ここ阿倍野にある安来家でも、そういった節目のお祝いに向けた仕出しなどのご注文が少しずつ増えてきました。

ご家族で囲むお祝いの席や、お世話になった方へのご挨拶。

そんな大切なひとときのために、私たちは朝早くから出汁を引き、仕込みを始めています。

お祝いのお席へお届けする仕出し料理は、いつも以上に華やかさを意識して整えます。

私たちが大切にしているのは、お弁当をお渡しする時の最初の姿です。

安来家では、折詰弁当の掛け紙を季節ごとに変えています。

今の時期は、3月の桃の節句に合わせた柔らかな色合いの掛け紙をかけました。

淡い桃色を背景に、ぼんぼりや菱餅、そしてふっくらとほころぶ桃や梅の花が描かれています。

その上から細い金の紐を一筋かけます。

ただの木の箱が、祝いの包みに変わる。

折詰弁当を包むとき、お祝いの気持ちを込めて、私たちも少し背筋が伸びる思いがします。

そして、白木の蓋をそっと持ち上げた瞬間。

まずはふわりと、お料理の香りが漂うはずです。

蓋を開けていただいた時、見た目と香りから一気に「新しい春」を感じていただきたい。

そう考えながら、懐石・会席でお出しするようなお料理の数々を、

お弁当箱の小さなマスの中に一つひとつ盛り込んでいます。

例えば、左上のマスには春の訪れを告げる山菜と海老のかき揚げ、あおさの天ぷらを入れます。

薄い衣をまとわせて、サクッとした歯触りが残るように揚げています。

添えられたレモンを少し絞っていただくと、よりさっぱりとした風味が引き立ちます。

真ん中のマスには、春らしくうすい豆の擦り流し餡をかけた一品を。

そして右上のマスには、小さな春の象徴であるホタルイカや、出汁をたっぷり含んだだし巻き卵やサヨリの鮨など少しずつ彩りよく詰めました。

下の段には、新鮮なお刺身を笹の葉の上に盛り付けます。

金目鯛の祐庵焼きやしっとりとしたローストビーフも添えて、

ボリュームと味の変化を楽しんでいただけるようにしています。

一つのお弁当箱の中で、どのように季節の移ろいを表現するか。

彩りのバランスや、お箸を進める順序を想像しながら、丁寧に御料理の配置を決めています。

春は、これからの期待で胸が膨らむと同時に、少しの寂しさが入り混じる季節です。

だからこそ、美味しいお料理を囲んで、心穏やかな時間を過ごしていただきたいと思っています。

3月ならではのイベントや、ご家族の特別な節目に。

安来家の日本料理が、皆様の大切な日の思い出に少しでも彩りを添えられれば嬉しいです。

艶やかな朱塗りの丸盆を、静かに調理台へ置きました。

ここへ、いくつもの小さな春を乗せていきます。

日本料理の懐石において、季節の移ろいを一枚の絵のように見せるのが八寸です。

冷たい冬から春へ。3月はどのような景色を作るのか、順を追ってご案内します。


桜色と青の器が運ぶ、春の香り

まずは中央、少し高さを持たせた桜色の器から整えます。

中には、八朔とうるい、そして春の訪れを告げるホタルイカを合わせました。

そこへ、ぽってりとした黄身酢をトロリと掛けます。

果肉のみずみずしい黄色と器のピンク色が、パッと目を引くと思います。

その手前、青い器に盛り付けたのは若ごぼうの炒め煮です。

鍋に少しだけ胡麻油を引いて若ごぼうを炒りつけ、香ばしさを引き出します。

そして、ふっくらとした揚げと一緒に、たっぷりの出汁を含ませるように炊き上げました。

厨房に立ち込める出汁と胡麻油の香りが、春の力強い生命力を感じさせてくれます。

巻き簀から外したばかりの温もりと、桃の節句の彩り

盆の左側には、いつものように焼きたての湯気が立つだし巻き卵を添えます。

その手前には、車海老、よもぎの緑が鮮やかな蓬麩、黄身焼真丈を一本に束ねた三色串を。

桃の節句を思わせる、春らしい軽やかな彩りに。

右側へ目を移すと、小さな芽キャベツをぐるりと牛肉で巻いたものを置いています。

その下に少し隠れるように、こんがりと焼き目をつけた穴子八幡巻きを忍ばせました。

手前には、ほろ苦い菜の花をスモークサーモンでくるりと巻いた一品を。

緑と橙の対比が、盆の上をきゅっと引き締めます。

サヨリの小袖寿司に隠した、ひとしずくの工夫

そして、今回の八寸の中で私が密かにポイントだと考えているのが、右下手前にあるサヨリの小袖寿司です。

透き通るような美しい身のサヨリですが、ただシャリと合わせるだけではありません。

まず、白いシャリには細かく刻んだ梅を混ぜ込みます。

淡白なサヨリと梅の爽やかな酸味は、驚くほど相性が良いです。

梅の香りが移ったシャリとサヨリの間には、青々とした大葉を一枚挟みます。

そして最後に、仕上げとしてレモンを数滴だけ、きゅっと絞り落とします。

このわずかなレモンの雫が隠し味となり、全体の味わいがひとつの形にきれいにまとまります。

ひとくちに込める想い

箸でつまめば、どれもひとくちで食べ終わってしまうような小さな料理たちです。

けれど、そのひとくちの裏側に、食材の組み合わせや細かな段取りといった手仕事の想いを込めることで、会席のコース全体の中でこの八寸がとても重要な役割を果たしてくれます。

目に入る彩り、ほのかな酸味、出汁の温かな香り。

3月を感じていただくための小さな手がかりを、盆の上のいろんなところに散りばめました。

阿倍野の安来家にお越しいただき広間でゆっくりと過ごされる時も、ご自宅へ仕出し料理の配達でお持ちする時も。

蓋を開けた瞬間に、ふわりと春の気配を感じていただければと思います。

阿倍野の街も、少しずつ柔らかな春の空気に包まれています。

三月といえば、桃の節句。

この時期の日本料理に欠かせない食材といえば、やはり蛤です。

懐石・会席の席でも、春の訪れを告げる品として古くから大切に扱われてきました。

漆塗りのお椀の蓋を外し、そっと両手で持ち上げる。

その瞬間、ふわりと白い湯気が立ち上り、澄んだ出汁の香りが鼻をくすぐります。

今年の安来家では、蛤をそのままお吸い物にするのではなく、少し手をかけて真薯(しんじょ)に仕立ててお出ししています。

お椀の中央に据えられた、真っ白でふんわりとした真薯。

ここには、細かく刻んだ蛤の身だけでなく、蛤から丁寧にとった出汁もたっぷりと練り込んでいます。

箸をそっと入れると、柔らかな真薯の中から、蛤が持つ豊かな潮の旨みが、澄んだお出汁のなかへじんわりと溶け出していきます。

食べ進めるにつれて、お椀全体の味わいが少しずつ深みを増していく。

そんな、春先ならではの繊細な味の移ろいを楽しんでいただけるよう整えました。

そして、真薯の手前に寄り添うように添えているのが、新物の若布と筍です。

椀の黒を背景に、若布の深い緑と筍の淡い黄色が鮮やかに浮かび上がります。

これらは単なる彩りとしての「あしらい」と呼ぶにはもったいないほど、春を代表する立派な食材です。

昔から料理の世界では「春の出会いもの」と呼ばれています。

同じ季節に、海と山という全く違う場所で育った旬のものが、ひとつの器の中で出会う。

すると不思議なことに、若布の柔らかな磯の香りと、筍のシャキッとした歯ざわりや爽やかな甘みが、お互いを邪魔することなく、見事に引き立て合うのです。

このお椀全体をまとめる「出汁」についても、少しお話しします。

蛤を主役にする場合、素材の味をそのまま活かした潮汁(うしおじる)仕立てにすることが多くあります。

けれど、今回はあえて、安来家の王道である「昆布と鮪節」を使った清汁(すましじる)仕立てにしました。

その理由は、先ほどお話しした真薯にあります。

真薯の中に蛤の出汁をしっかりと抱え込ませているため、おつゆの中でほぐれた時に、中から十分すぎるほどの潮の旨みがあふれ出します。

もし、張る出汁まで蛤の潮汁にしてしまうと、少し味がぶつかり、強くなりすぎてしまうと考えました。

だからこそ、旨みを受け止める土台は、いつもの澄み切った昆布と鮪節の出汁がベストです。

厨房で何度も試作を作り、温度を変えて味わいを確認した結果、やはりこの組み合わせが一番だと落ち着きました。

主張しすぎない鮪節のまろやかな風味が、蛤の旨みを下から優しく支えてくれます。

三月のど真ん中をゆく食材を、ひとつの器に集めたお椀。

椀物はコースのなかでも花形と呼ばれる大切な一品です。

お店の席で出来立ての熱々を味わっていただくのはもちろん、ご家庭でのお祝いごとに向けた仕出し料理や、配達でお届けする際にも、この春の香りをお手元で感じていただけたらと思います。

蓋を開けた瞬間の湯気とともに、うららかな春の情景を味わってみてください。

今日は3月3日、ひな祭りです。

春の少し冷たい空気の中にも、柔らかな日差しを感じる良い季節ですね。

初節句のお祝いに向けた御料理の準備を進めています。

重箱や漆の器に、春の食材を丁寧に盛り付けていきます。ほんのりと桜色に染まった食材や、みずみずしい青菜が、お祝いの席の彩りとなります。

本日は、ご自宅でご家族揃ってお祝いをされるお客様へ、仕出し料理の配達にも向かいました。

赤ちゃんの健やかな成長を願う特別な日です。

だからこそ、お料理の形が少しでも崩れないよう、そっと箱へ収めて車へと運びます。

そしてここ、阿倍野にある安来家の店内でも、初節句のお祝いの席をご用意しました。

懐石・会席のコースに合わせて、温かい椀物の蓋を開けた瞬間、優しい香りがお部屋の隅々にまで広がっていきます。

日本で古くから受け継がれてきたこのような美しい行事を、日本料理の店として、これからも大切に守り、伝えていきたい。お祝いの膳を整えるたびに、そう強く思います。

そんなお祝いの席を設けたお座敷には、赤い毛氈(もうせん)を敷き詰めた七段飾りの雛人形を飾っています。

写真をご覧いただくと、一番上には立派な屋根のついた御殿があり、その中でお内裏様とお雛様が静かに座っています。

三人官女や五人囃子、そして下に並んだお琴や小さな重箱などの細やかなお道具まで、一つ一つが精巧な作りです。

実はこの雛人形、100年以上も前に作られたものです。

お顔の穏やかな表情や、少し色褪せた着物の風合いには、長い年月を経たからこそ滲み出る、静かな佇まいがあります。

かなり古いものですから、毎年飾り付けるときも、片付けるときも、とても神経を使います。

薄い和紙をそっとめくり、決して傷をつけないように両手で包み込むようにして持ち上げ、段の上の定位置へと整えていきます。

ただ、そうやって丁寧に埃を払い、毎年大切に扱うことで、なんとか今日まで受け継がれてきました。

新しいものにはない、時を重ねた独特の温もりが、この人形たちには宿っているように感じます。

だからこそ、春が近づくこの季節になると必ず箱から出し、お座敷の空気に触れさせています。

こちらの雛人形は、3月の間はお座敷にそのまま飾っております。

お食事でご来店の際には、ぜひお近くで、100年の時を越えてきたお顔をひと目見ていただけたらと思います。

今日から3月に入りました。

カレンダーを一枚めくっただけで、ふっと風の冷たさが和らぎ、心なしか暖かく感じるから不思議です。

朝早くから仕込みをする厨房でも、水を使う私の手元が、冬の厳しい冷たさから少しだけ解放されました。

ここ阿倍野の街並みにも、柔らかな日差しが差し込む時間が増えてきたように思います。

季節が前へ進むと、お作りする日本料理も一気に春めいてきます。

3月に入り、お献立の中心は「桃の節句」をテーマにしたものへと変わりました。

冬の間は根菜の力強さや、立ち上るお出汁の湯気が主役でしたが、今は違います。

菜の花のほろ苦い青い香りや、桜色に染まった食材たちが、まな板の上を明るく彩っています。

厨房に並ぶ器や食材の色彩が、日を追うごとに鮮やかなトーンへと移り変わっていくのを見ています。

お店でお出しする懐石・会席のコースで春を味わっていただくのはもちろんですが、ご自宅でご家族揃ってお祝いの席を設ける方からのご相談も増えてきました。ひな祭り用の仕出し料理として、写真のような折詰弁当のご注文を承っています。

意識しているのは、白木の蓋を開けた瞬間に、パッと春の景色が広がるような彩りを作ることです。

二段重の下段の左には、ちらし寿司を敷き詰めました。

細く刻んだ錦糸卵の明るい黄色を一面に広げ、その上にふっくらと香ばしく焼き上げた穴子、茹でたての海老の紅白、そして艶やかに光るいくらを散らしています。酢飯の甘酸っぱい香りが、ふわりと鼻を抜けていきます。

桃の節句といえば、やはりちらし寿司ですね。

こうして折詰に組み込むだけでなく、ちらし寿司単体でのご用意もしています。

下段右には、笹の葉を敷いてお造りを盛り込みました。ねっとりとしたマグロの深い赤、白身魚の透き通るような身、そして梅の形に飾り切りをした人参を添えて、小さな春の訪れを表現しています。

冷たいものは冷たいまま召し上がっていただけるよう、配達の段取りにも細心の注意を払って準備を整えます。

そして上の段には、手仕事の品をぎっしりと詰め込みました。

細い衣を纏わせてサクサクに揚げた海老の食感、しっとりと焼き上げただし巻き卵。

春を告げる蛍烏賊には、なめらかな黄身酢をかけて仕上げています。

淡い緑色の餡、これはうすい豆の擦り流しを張ったお料理には、柔らかな桜色の道明寺蒸しを浮かべました。

一つひとつのマス目に、春の味覚と食感を閉じ込めました。

春の陽気とともに、丁寧に箱詰めしたお料理をお届けします。

ご自宅でお子様の健やかな成長を願う食卓に、安来家の料理がささやかな華を添えられればと思います。

暦の上では立春を過ぎ、少しずつ暖かくなって春の気配を感じる頃となりました。

ですが2月は年間を通していちばん寒い季節だとも言われています。

ここ阿倍野でも、ふとした瞬間に底冷えを感じる日が続いています。

だからこそ、2月は体の芯からじんわりと温まるような一品をお出ししたいと思いました。

今回お出しするのは、熱々のみぞれ餡をたっぷりとかけた炊合せです。

黒く深みのある器の蓋を開けると、ふわりとお出汁の湯気が立ち上ります。

その奥から、爽やかな柚子の香りが届くように仕立てました。

主役となる食材たちは、みぞれ餡の中にそっと沈めています。

一番上には、今の時期しっかりと脂の乗った穴子を、ふっくらとした煮穴子にして乗せました。

その下の奥には、じっくりと時間をかけて炊き上げ、お出汁を含ませた海老芋が少し隠れています。

そして手前には、雲子(くもこ)を添えました。薄く衣をくぐらせて、天ぷらのようにさっと揚げています。モクモクとした鱈の白子の形が空に浮かぶ雲のようだから、関西では古くから雲子と呼ばれて親しまれていますね。

これらを優しく包み込むみぞれ餡自体は、すりおろした大根とお出汁で作ったあっさりとした味わいです。

ただ、海老芋の甘み、衣をまとった雲子のコク、そして煮穴子がしっかりと旨味を主張してくれます。

だからこそ、濃すぎず、全体としてまとまりの良い炊合せとなりました。

最後に緑の三つ葉をあしらい、振りゆずで少しの黄色と香りのアクセントをつけています。

目の前のお膳に運ばれた時の温度や香りまで大切にするのが、日本料理の醍醐味だと考えています。

お店での懐石・会席のお席でも、あるいはご自宅へお届けする仕出し料理の配達でも、目で見た瞬間の喜びは変わりません。

まだまだ寒い日が続きます。安来家からお届けする冬の味わいで、どうぞほっと一息ついてもらえれば幸いです。

阿倍野の街を吹き抜ける風に、ほんの少しだけ柔らかな温度を感じるようになりました。

空の色も真冬のそれとは少し違い、春の気配を帯びてきているようです。もう2月も終わりに近づいていますね。

日本料理の特に安来家の厨房において、この月末から月初にかけての時期は独特の空気に包まれます。

それは、今の季節と次の季節が、この空間で同時に交差するからです。

今はまさに、月替わりのタイミングです。

目の前の、今日ご予約いただいたお客様のために、今月の懐石・会席料理を全力で仕上げていきます。

お椀の蓋を開けた瞬間に立ち上る、出汁の柔らかな湯気。

包丁がリズミカルに食材を刻む音。焼き場から漂う、表面が香ばしく色づく匂い。その一つひとつに神経を集中させます。

今月ならではの味覚を、一番美味しい状態でお出ししたい。だから、器に盛り付ける手の動きにも自然と熱が入ります。

それはお店の中だけでなく、外へお届けするお料理でも同じです。

仕出し料理の折箱の蓋を閉める直前まで、彩りのバランスや詰め具合を目で追います。何度でもチェックをすることは怠りません。

そして配達でお客様の元へ向かう車の中でも、箱の中で料理が美しく保たれているか、常に気を配っています。

ただ、私たちの頭の半分は、すでに来月へと向かっています。

目の前の料理に全力を注ぎながらも、同時並行で次の献立を組み立てているのです。

「来月のあの食材には、どんな味付けで他の食材と合わせようか」「春らしいあの器に、どうやって季節を盛り込もうか」

鍋の火の通り具合を確認しながら、頭の中では別の食材の組み合わせをシミュレーションしています。

手が空いたわずかな時間には、白い紙にペンを走らせて、来月の段取りを文字に起こしていきます。

今月の集大成を形にしながら、来月の産声を準備する。

この同時進行は、正直に言えば目が回りそうなほど慌ただしい時間です。厨房内の足早な動きが、それを物語っています。

けれど、不思議と疲れは感じません。むしろ、この季節の変わり目の忙しさは、確かな喜びとして私たちの手の中にあります。

季節が移り変わる瞬間にいち早く立ち会い、それを料理として形にしていく。この静かな高揚感は、料理を作る者にとって何よりのやりがいです。。

そして、私たちが厨房で感じているこの喜びやワクワクとした気持ちを、少しでもお客様におすそ分けできたら嬉しいです。

私たちが考え抜いた新しい献立を口に運んでいただいた時、「ああ、もう新しい季節が来たのだな」と笑顔がこぼれるその瞬間のために。

安来家は今日も、丁寧に日々を重ね、新しい月の準備を整えています。

移りゆく季節の喜びを、そのまま器にのせてお届けしたいと思います。

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