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6月の先付として、夏越しの祓と茅の輪くぐりを題材にした一品をご用意しております。

写真のしつらえは、半年の節目に行われる夏越しの祓を思わせるものです。

料理そのものだけでなく、器の中に季節の行事や祈りの気配をそっと映すことも、日本料理の楽しみのひとつです。

夏越しの祓は、6月末に行われる大祓のひとつです。神社本庁の説明では、大祓は日々の暮らしの中で身についた穢れや災厄の原因となるものを祓い清める神事で、6月の大祓を夏越の祓、12月の大祓を年越の祓と呼びます。

夏越しの祓では、茅や藁を束ねた茅の輪を神前に立て、これをくぐって無病息災を祈る神社も多くあります。

茅の輪くぐりは、一般には左、右、左と八の字を描くように三度くぐる作法が知られています。

ただし、細かな作法は神社によって異なります。由来としては、旅の神を貧しいながらも手厚くもてなした蘇民将来の故事と結びつけて語られることが多く、茅の輪は災厄を避け、残り半年を健やかに過ごす願いを込めたものとして受け継がれてきました。

また、夏越しの祓では、人の形をした紙の形代に穢れを移して祓う風習や、京都を中心に水無月という和菓子をいただく習わしも知られています。いずれも、暑さが本格化する前に身を清め、これからの季節を無事に過ごしたいという思いにつながっています。日本料理でも、こうした行事の背景を料理の形や器使いに映すことで、季節をより身近に感じていただけます。

今回の先付では、その茅の輪を料理のしつらえに取り入れています。6月は梅雨入りへ向かい、蒸し暑さも増していく季節です。その前に一度、心身を清め、夏を無事に越すことを願う夏越しの祓。そうした季節の意味を、最初の一皿に込めました。

左の器は、手前に甘鯛の酒蒸し、奥に茄子のお浸しを盛っています。甘鯛の上には鱗揚げを添え、やわらかな酒蒸しの口当たりに、香ばしさと軽い食感を重ねました。真ん中には、千切りにした生姜を揚げています。生姜の香りは、梅雨どきの料理にすっきりとした余韻を添えてくれます。

甘鯛の酒蒸しは、先付として重くなりすぎないよう、しっとりとした味わいを大切にしています。そこへ鱗揚げの香ばしさを添えることで、同じ甘鯛の中にもやわらかさと軽い歯ざわりが生まれます。茄子のお浸しは、涼を感じる一品として、6月の湿り気のある空気に寄り添います。揚げた千切り生姜は、香りで全体を引き締める役割です。

右の器は、島根のブランドアジ「どんちっちアジ」の薬味巻きです。どんちっちアジは、島根県西部沖で漁獲され、浜田に水揚げされるマアジのうち、平均脂質10%以上、サイズ50g以上などの基準を満たしたものとされています。脂ののったアジを薬味で巻くことで、旨みの厚みがありながら、先付として重くなりすぎない味わいになります。

どんちっちアジは脂ののりが特徴ですが、薬味を合わせることで、香りと後口の軽さが加わります。先付は、これから始まる料理の入口です。最初の一皿で強く押しすぎず、それでいて季節の印象が残るよう、甘鯛、茄子、生姜、どんちっちアジをそれぞれ違う表情で組み合わせました。

夏越しの祓は、過ぎた半年を振り返り、これからの半年を健やかに過ごすための節目です。安来家の先付でも、その行事をただ飾りとして使うのではなく、食材の香り、口当たり、涼しさとともに、6月ならではの祈りと季節の移ろいを感じていただけるように考えました。

阿倍野の日本料理 安来家では、季節の懐石料理を、その時期の行事や旬の食材に合わせてご用意しています。水無月の先付として、夏を迎える前のひとときをお楽しみいただければ幸いです。

前回に続き、安来家の茶懐石出張料理から、茶懐石の流れを少しご紹介いたします。

茶懐石は、お茶をおいしくいただくために用意される食事であり、華やかさだけを重ねる料理ではありません。

茶事の中では、飯、汁、向付から始まり、椀物、焼物などへ進んでいく流れがあり、席や流派によって細かな違いはありますが、一品ごとに出される意味があります。

前回は、最初の向付と一文字飯、汁物についてご紹介しました。

今回は、その続きとして椀物と飯器を中心に取り上げます。

出張料理では、店内とは違う場所で料理をお出ししますが、茶事の進行に合わせて器や飯器を用意し、次の料理へ自然につながるように支度を進めています。

椀物です。今回は蓬豆腐にアイナメを合わせ、周りにはじゅんさいをあしらい、吸い口には木の芽を添えました。茶懐石では、最初の飯、汁、向付に続いて、椀盛、あるいは煮物椀と呼ばれる椀物が出されます。旬の具材と出汁の香りをひとつの椀の中で味わう料理で、茶懐石の中でも大切な位置にある一品です。

ここでいう椀物は、最初に出る汁とは役割が異なります。はじめの汁は、飯や向付とともに席の入口を作るもの。

椀盛はその後に、季節の素材を椀の中心に据え、出汁の澄んだ香りや椀種の口当たりを味わっていただく御料理です。

茶懐石の流れを写真で追うと、同じ「汁気のある料理」に見えても、それぞれ置かれる場面が違うことがわかります。

蓬豆腐のやわらかな青み、アイナメの白身、じゅんさいの涼やかな口当たり、木の芽の香りが重なることで、5月下旬らしい初夏の気配が椀の中に入ります。2026年5月29日は、二十四節気でいうと小満の期間にあたります。草木が勢いを増し、季節が満ちていくころ。椀物にも、そうした時期の軽やかさと、これから水無月へ向かう涼しさを少し含ませています。

続いてはは飯器です。茶懐石では、飯は最初に少量だけ盛られ、その後、席の進みに合わせて飯器が出されます。

ご飯は最後にまとめて出すものではなく、茶懐石の始まりから席の中にある大切な存在です。

今回は、1回目の飯器と2回目の飯器で内容を変えてご用意しました。

1回目の飯器としてお出しした新生姜ご飯です。新生姜の香りは、初夏の料理に軽さを添えてくれます。

椀物の後にご飯の香りが入ることで、席の印象が少し変わり、次の料理へ向かう間合いも生まれます。

2回目の飯器としてご用意した白いご飯です。あえて白いご飯に戻すことで、料理の流れの中に落ち着きが出ます。少し水分が多いご飯というのも茶懐石ならではの特徴ですね。

飯器を二度に分け、内容を変えることで、同じ「ご飯」であっても席の中で受け取る印象は変わります。1回目の新生姜ご飯は、初夏の香りを感じていただく趣向として。2回目の白いご飯は、料理を受け止める余白として。茶懐石では、量を多くすることよりも、どの場面で何を出すかが大切になります。

写真で追っていくと、椀物や飯器が単独の料理としてではなく、茶事の時間の中で前後の料理と響き合っていることも見えてきます。ひとつの椀、ひとつの飯器にも、季節と順序の両方が込められています。

茶懐石には、細かな決まりや順序があります。ただし、決まりを見せるためだけの料理ではなく、お茶へ向かう時間を心地よく進めるための料理でもあります。安来家では、茶懐石や出張料理について、内容や人数、席の流れに合わせてご相談を承っております。

茶懐石の一品一品がどのように席の時間をつくっていくのか、少しでも伝われば幸いです。

写真は、席のはじめにお出しした向付、一文字飯、汁物です。

茶懐石では、料理がただ順番に出るのではなく、飯、汁、向付から始まる流れそのものに意味があります。最初のひと揃いは、これから続く時間の入口でもあり、季節の気配を静かに伝える場面でもあります。

5月21日から5月31日までの10日間、安来家では茶懐石の出張料理をさせていただいております。

茶懐石の出張料理は年に数回ございますが、今回は簡易的な点心ではなく、人数は少ないながらも本格的な懐石料理としてのお支度です。

今年の5月21日は、二十四節気の「小満」にあたります。草木が勢いを増し、天地に生命が満ち始めるころとされ、5月下旬から月末にかけては、初夏の明るさと、梅雨を前にした湿り気が少しずつ重なっていきます。皐月の茶事として、そうした時期の空気を料理の中に映せるよう、献立の始まりを考えました。

茶懐石は、お茶をいただく前の食事として、空腹を満たすだけのものではありません。量を重ねて豪華に見せるよりも、飯と汁、向付から始まり、席の進み方に合わせて少しずつ味わいを移していく料理です。出張料理であっても、その考え方は同じです。場所が変わっても、茶事の時間に合わせ、料理が急ぎすぎず、かといって間延びしないように、一品ごとの役割を意識してお出ししています。

向付は、初カツオのたたきです。初カツオは初夏を告げる味として古くから親しまれてきました。皐月の茶事の始まりに、重たくなりすぎず、きりりとした印象を添えてくれる一品です。向付は、席のはじめに出る料理でありながら、強く主張しすぎるものではありません。飯と汁物のそばに置かれることで、懐石の始まりにふさわしい落ち着いた景色になります。

汁物は、あさりの袱紗仕立てです。あさりのうまみを生かしながら、袱紗仕立てならではのやわらかな口当たりで、皐月の茶事に寄り添う一椀としてご用意しました。汁物は、味の濃淡だけでなく、温かさや香り、口に入ったときのほどけ方まで含めて、席の流れを作る大切な役割があります。

一文字飯、向付、汁物が並ぶと、料理の華やかさだけではなく、茶懐石らしい静かな始まりが見えてきます。人数が少ない席では、一品ごとの距離も近くなります。そのぶん、器を前にしたときの印象や、最初のひと口の季節感が、その後の時間に自然とつながっていきます。

出張料理では、店内とは違う場所でお料理をお出ししますが、茶事の中で料理が置かれる意味や順番は変わりません。お客様の人数、席の流れ、料理をお出しする場所の環境によって、準備の仕方や運び方は変わります。それでも、簡易的にまとめるのではなく、茶懐石としての形を保ちながら、その場に合わせて無理のない流れになるように考えています。

今回のように人数が少ない茶事では、料理と向き合う時間もより静かになります。ひと皿を大きく見せるより、ひと口ごとの余韻や、次の料理へ移る間合いが大切になります。初カツオの向付で季節の輪郭を出し、あさりの袱紗仕立てで椀物のやわらかさを添えることで、皐月の終わりらしい軽やかさと落ち着きが同じ席に並ぶように意識しました。

5月も終わりに近づき、皐月から水無月へ移るころ。

初カツオの向付、あさりの袱紗仕立て、一文字飯から始まる今回の茶懐石が、季節の移ろいを感じていただくひとときになれば幸いです。

安来家では、季節の懐石料理や茶懐石の出張料理について、内容や人数に合わせてご相談を承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。

五月の第二日曜日を過ぎ、街の空気にも少し落ち着きが戻ってきました。

母の日のためにご家族で集まられた方もいれば、連休明けの慌ただしさの中で、少し遅れて感謝の席を用意される方もいらっしゃると思います。暦の上では立夏を迎え、春の名残と初夏の気配が重なるころです。

母の日当日はたくさんのお祝いの御料理をお作りさせて頂きました。

お祝いの席、そしてその空間でお喜びいただけること、何より嬉しく思います。

心より感謝申し上げます。

阿倍野の安来家では、この時期は季節の切り替わりを意識しながら、店内の懐石料理や仕出し料理に初夏の気配を映しています。

華やかに盛り込むだけではなく、食べ終えたあとにすっと気持ちが落ち着くような料理。初夏の日本料理には、そうした静かな心地よさがよく合います。

母の日の余韻と、家族の食卓

母の日は、特別な贈り物だけの日ではありません。

日ごろの感謝を、家族で囲む食卓の中で伝える日でもあります。外でゆっくり食事をされる方、ご自宅で仕出し料理を囲まれる方、それぞれに過ごし方があります。

安来家では、そうしたご家族の時間に合わせて、料理の流れや量、召し上がる方の年齢層にも気を配ります。ご年配の方がいらっしゃるお席では食べやすさを考え、お子様がいるお席では場が明るくなるような見え方も大切にします。

料理は、ただお腹を満たすためだけのものではありませんので、集まった方の会話が自然にほどけるように、そっと支える役割もあります。

立夏を過ぎたころの懐石

立夏を過ぎると、暦の上では夏に入ります。

とはいえ、五月中旬はまだ春のやわらかさも残る時期です。強い涼味に寄せすぎるには少し早く、春の名残だけでは季節が止まってしまいます。

この頃の懐石では、軽やかさと落ち着きの間を探るように献立を考えます。出汁の旨みを土台にしながら、香りは重くしすぎず、口当たりはやさしく。季節が一段進んだことを、無理なく感じていただけるように仕立てます。

安来家では、料理によって鮪節と真昆布の一番出汁を使います。出汁の輪郭がはっきりしていると、椀物や炊き合わせの印象も自然にまとまります。派手に主張するものではありませんが、料理全体の芯になる大切な仕事です。

季節を伝えること

日本料理では、料理そのものだけでなく、器や流れも季節を伝える大切な要素です。

五月中旬は、色を強く出しすぎるよりも、青みや余白を生かした見せ方がよく合います。端午の節句の力強さが過ぎたあと、少し落ち着いた初夏の気配を、器の色合いや盛り付けの間合いで感じていただくような考え方です。

懐石は、一品だけで完結するものではなく、先付から椀物、八寸、炊き合わせへと進む中で、味の濃淡や温度、明るさを少しずつ変えていきます。

食べ進めるうちに、春の余韻から初夏の軽やかさへ自然に移っていく。そうした流れを作ることも、安来家が大切にしている仕事のひとつです。

仕出しにも、季節の加減を

店内でのお食事だけでなく、仕出し料理にも季節の考え方があります。

仕出しでは、冷めても味がぼやけないように、汁気や詰め方を調整します。配達の時間、召し上がるまでの間、蓋を開けたときの見え方。そうした点を考えながら、料理を箱の中に収めていきます。

五月は、ご家族のお祝い、法事、会社でのお食事など、さまざまな集まりが重なる時期です。重たすぎず、けれど簡素になりすぎない。初夏の仕出しには、そのような加減が合うように思います。

ご自宅でゆっくり過ごしたい日や、会社で大切なお客様を迎える日にも、御料理で季節を感じていただければ幸いです。

阿倍野で、初夏のひとときを

母の日が過ぎ、連休の余韻も少しずつ日常へ戻っていくころ。

こうした時期だからこそ、ゆっくりと食事をする時間が、気持ちを少し軽くしてくれることがあります。阿倍野の安来家では、季節の流れを料理に映しながら、店内での懐石料理や仕出し料理をご用意しています。

大切な方とのお食事、ご家族の集まり、少し改まった会食など、ご予定に合わせたお料理については、いつでもお気軽にご相談くださいませ。

桜の盛りも過ぎ、阿倍野の街でも、歩く人たちの装いも少しずつ軽やかになってきました。

安来家では、月も半分を過ぎると、来月の献立も考え作り始めます。

「春の名残」と「初夏の走り」をどう日本料理として映し出すか、毎日頭を悩ませながら、でも楽しく献立を練っています。

懐石料理の最後を締めくくる「お食事」。

お酒を楽しんだ後でも、すっとお腹に収まるような、それでいて心の温度が少し上がるような一品をお出ししたい。

そんな想いで今月ご用意しているのが「生湯葉の葛あんかけごはん」です。

澄んだ出汁と「吉野葛」が作る、口当たりの良さ

このお料理の命は、「あん」の透明感と喉ごしにあります。

一般的にあんかけには片栗粉を使うことも多いと思います。

安来家では「吉野葛」を使います。片栗粉は粘りが重かったり、少し濁りが出てしまいます。

一方、葛は特有の滑らかさがあり、何より出汁の表情を美しく透かしてくれるんですね。

そのベースとなる出汁にも、少し工夫をしています。

今回は力強い鰹節(かつおぶし)ではなく、あえて「鮪節(まぐろぶし)」と真昆布でひいた一番出汁を選びました。鮪節は鰹に比べて血合いが少なく、非常に上品で澄んだ甘みが出るのが特徴です。湯葉という繊細な素材の味を邪魔せず、そっと寄り添うような出汁でなければならないと考えたからです。

一度「炊く」ことで生まれる、湯葉の重なり

主役の湯葉は、上質な生湯葉を仕入れています。

そのまま食べても美味しいものですが、ごはんに乗せるとなると、もう一手間が必要です。

まず生湯葉を薄い出汁でさっと一度炊き上げます。こうすることで、湯葉の一枚一枚に出汁の旨みが染み込み、ごはんと一体になった時の馴染みが格段に良くなります。

炊いた湯葉は、お箸で掬いやすい適度な大きさに切り分け、先ほどの鮪節の出汁と合わせます。

吉野葛でとろみをつけたら、炊き立ての白いごはんの上へ。

最後に添えるのは、三つ葉と、少し多めにすりおろした「生姜」です。

この生姜が、実は名脇役でして。葛あんのまろやかな甘みの中に、生姜のピリッとしたパンチが加わることで、味がぐっと引き締まります。湯葉の優しさと生姜の刺激、この対比が春の終わりの少し気だるい体には心地よく響くと思います。

脇を固める、香ばしい味噌汁と香の物

お食事には、もちろんお味噌汁と香の物を添えています。

安来家のお味噌汁は、実は毎月こっそりと具材を変えているんですよ。

今月は、お豆腐と葱、そして「香ばしく焼いた薄揚げ」を入れています。

揚げを一度網で焼いてからお汁に入れることで、お椀の蓋を開けた瞬間に、ふんわりと香ばしさが広がります。

ほんの些細なことですが、この「ひと手間」が、最後の一口まで楽しんでいただくためのこだわりです。

添えられた香の物と一緒に、温かいうちにお召し上がりください。

出来立ての景色、ご来店で

実はこの「湯葉あんかけごはん」、お店でお食事をされるお客様限定となります。

安来家では阿倍野を中心に仕出し配達も承っておりますが、このお料理は配達でお届けすることができません。

どうしても時間が経つと、ごはんがあんの水分を吸ってしまい、独特のさらりとした食感が損なわれてしまうからです。

「一番美味しい瞬間を、そのまま召し上がっていただきたい」

そんな理由から、配達の場合はお寿司をご用意させていただき、このあんかけごはんは、お座敷やイス席でゆっくりとお過ごしいただくお客様へのみお出ししています。

春の光が差し込む個室で、最後の一匙までゆっくりと。

安来家でのひとときが、皆様にとって心解けるものになれば、これほど嬉しいことはありません。

吹く風に心地よい春の深まりを感じる季節となりましたね。

日本料理の阿倍野「安来家(やすきや)」では、日々移ろいゆく季節の美しさを、一つひとつのお料理に映し出してお客様をお迎えしております。

懐石料理において、コースの中盤でお出しする「椀物(わんもの)」は、料理人の腕と心が最も試される、いわば華のような存在です。毎朝、昆布と鮪節に向き合い、雑味のない一番出汁を引くことから、私たちの1日は始まります。

四月(卯月)にご来店いただいたお客様にご用意しているのは、

黒漆のお椀の中に小さな春の景色を仕立てた一品です。

蓋を開けた瞬間に立ち昇る、一番出汁と木の芽の香り

漆塗りの蓋にそっと手を添え、ゆっくりと開けていただきますと、立ち昇る一番出汁の豊かな香りと、天盛りにした「木の芽(山椒の若葉)」の爽やかな薫りです。

透き通ったお出汁の中で、まず目に入ってくるのは、手前に添えられた柔らかな桃色の「道明寺粉」。関西の春の和菓子である桜餅にも使われるこのもち粉は、あえて中に具材を入れず、丸く整えております。もっちりとした道明寺粉に、上品なお出汁がたっぷりと染み込み、噛めば優しい甘みと旨味が口の中に広がります。

その奥に控えるのは、なめらかに仕上げた黄色い「玉子豆腐」。

春のうららかな陽射しのような色合いが、お椀の景色に温もりを添えております。

蝶が舞い桜が咲く春の小川

道明寺粉と玉子豆腐の上には、春の訪れを告げる魚「白魚(しらうお)」をあしらいました。

白魚は非常に繊細なため、火の入れ加減一つで食感が大きく変わってしまいます。

塩水で少し締めてから、数%の塩水でボイルします。

なるべく白魚の1番美味しい状態を活かせるように。

ふっくらとした口当たりになるよう、丁寧に仕込みます。

人参はひらひらと舞う蝶の姿に、大根は可憐に咲く桜の花びらに。

春の小川のほとりのような景色を、お椀の中でお楽しみいただければと思います。

見た目の華やかさだけでなく、それぞれの食材が持つ味わいや食感、そしてお出汁が一つに重なり合う調和を大切にしております。

お座敷の静かな空間で、心温まるひとときを

安来家では、出来立ての最も美味しい瞬間を逃さぬよう、最適な温度で椀物をお席までお運びしております。

個室のお座敷では、周りの目を気にされることなく、ご家族や大切な方とのお食事をゆっくりとお楽しみいただけます。

蓋を開ける瞬間のわくわくとしたお気持ちや、温かいお出汁を一口含んだ時の安堵感を、静かなプライベート空間で存分にご堪能ください。

今は、ご入学やご就職、お顔合わせなど、新しい門出を祝うお席の多い季節。

阿倍野の喧騒から少し離れた安来家で、心ほどける春のひとときをお過ごしいただけるよう、真心を込めておもてなしをさせていただきます。

頬を撫でる風にも確かな温もりが混じり、阿倍野の街にも柔らかな春の陽射しが降り注ぐ季節となりました。

日本料理「安来家(やすきや)」では、走り・旬・名残という季節の移ろいを一皿ごとに込めて、皆様をお迎えしております。

懐石料理の醍醐味は、旬の鮮魚や力強い大地が育んだお野菜を味わっていただくことはもちろんですが、

お食事の余韻を決定づける「水物(甘味)」もまた、私たちが大切にお仕度しているおもてなしの一つです。

今月、四月(卯月)にご来店いただいたお客様にご用意しているのは、うららかな春の野を思う水物の盛り合わせ。

和の情緒に少しばかり洋の華やかさを添えた、春の一皿でございます。

春の息吹を閉じ込めた、ふんわり蓬(よもぎ)のロールケーキ

お盆の上に咲いた桜の器。その中央で鮮やかな萌葱(もえぎ)色を見せるのは、春を告げる野草「蓬」をたっぷりと生地に練り込んだ自家製のロールケーキです。

口に運んでいただきますと、新緑の清々しくもどこか懐かしい香りがふわりと広がります。この「春の香り」を逃がさないよう、焼き上げの温度や時間に気を配りました。空気を含ませて焼き上げた生地は、軽く、舌の上でほどけるような柔らかさに仕立てました。

そして、中に巻き込んだクリームにも、少しばかりひと手間を加えております。

通常の生クリームに、まろやかなコクとほのかな酸味を持つマスカルポーネチーズを合わせました。蓬の持つ野趣あふれる風味に、マスカルポーネの芳醇で上品なコクが重なり合うことで、和の食材が洋の装いをまとう、軽やかな味わいに仕上がっております。

なめらかな口どけを心がけた、きな粉のアイスクリーム

ロールケーキに寄り添うように添えているのは、瑞々しい紅色の苺と、淡い色合いのきな粉アイスクリームです。

香ばしいきな粉を使ったアイスクリームは、和の甘味としてたいへん馴染み深いものですが、作り手にとっては「粉っぽさ」が残りやすく、口当たりのバランスをとるのが少し難しいものでもあります。

お食事の最後を心地よく締めくくっていただけるよう、きな粉の豊かな風味をしっかりと引き出しつつも、舌触りはあくまでもなめらかになるよう、配合に細心の注意を払いました。ひんやりとした冷たさの中に、大豆の優しい甘みがふんわりと広がる仕上がりとなっております。

合間に添えたフレッシュな苺の瑞々しい酸味が、お口の中をさっぱりと整えてくれますので、最後まで飽きることなく春の調べをお楽しみいただけることと存じます。

くつろぎの空間で、心ほどける食後のひとときを

季節の懐石料理、そしてこちらの春のデザートは、安来家の店舗にてお召し上がりいただけます。

完全個室のお座敷や、足元を気にせずお過ごしいただけるイス席の個室では、周囲の喧騒を離れ、大切な方と水入らずの時間をお過ごしいただけます。また、少人数様であれば、半個室のカウンター席でのひとときもおすすめです。

季節のお料理と甘味の余韻に浸りながら、温かいお茶でほっと一息つく。

そんな心ほどける時間をご提供できればと願っております。

春は、新しい門出のお祝いやご会食など、皆様でお集まりになる機会の多い季節でございます。

おかげさまで、土日や祝日はお座敷から順にお席が埋まりやすくなっております。お顔合わせやご家族の慶事など、ご予定がお決まりになられましたら、どうぞ少しだけお早めに安来家までお声がけくださいませ。

皆様の春の思い出を彩るお手伝いができますよう、阿倍野の静かな空間で、心を尽くしておもてなしをさせていただきます。

前回は母の日のお話でしたので、少し季節が進んでいましたが、今回は今月四月ど真ん中の御料理のご紹介を。

日本料理において、「季節の移ろい」を、お客様に一番ダイレクトに感じていただけるのが「八寸(はっすん)」という一皿です。海の幸、山の幸、それぞれの「走り・旬・名残」をひとつの器の中に少しずつ盛り込み、まるで小さな庭のように季節の情景を描き出します。

今回は、今まさに安来家の厨房で仕込み、お出ししている八寸の様子を詳しくご紹介いたします。

右の列:出来立ての温もりと、お酒が進む海の恵み

四角い白木の盆に桜の枝を添え、右・中央・左と三列に分けてお料理を盛り付けた今月の八寸です。

まず右側の列には、手前から「しらすのなめろう」「だし巻き卵」「鯛皮ポン酢」と並べています。

この中で、お店としてこだわりを持っているのが「だし巻き卵」です。これは決して作り置きをしません。お客様がお席につかれ、お酒やお食事が進むペースを見計らい、お出しする直前に厨房でふっくらと焼き上げています。熱々の状態で箸を入れると、閉じ込められていたお出汁がじゅわっと溢れ出します。

その手前には、春に美味しいしらすを混ぜ合わせ仕上げたなめろうと、さっぱりとした鯛皮ポン酢。冷たい日本酒がよく合う、大人の並びです。

真ん中の列:春の香りを重ねて

中央の列は、手前から「そら豆の蜜煮」「筍の木の芽和え」「鯛の子」です。

ほっこりとしたそら豆は、蜜で優しく炊き上げることで、鮮やかな緑色と上品な甘みを引き出しました。そして、この季節の和食に欠かせないのが「木の芽(山椒の若葉)」の香りです。春の味覚である筍に、木の芽を和えることで、口の中で季節がバトンタッチするような感覚を味わっていただけます。

関西の春からの定番である鯛の子も、丁寧に出汁を含ませて、花が咲いたように美しく炊き上げています。

左の列:手間を惜しまない、細やかな仕事

そして左側の列。手前から「新じゃが芋のオランダ煮」「筍の煮凝り」「桜豆腐」です。

「オランダ煮」という言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。これは、食材を一度油でサッと揚げてから、お出汁で甘辛く炊き上げる手法のことです。新じゃが芋を揚げることで表面にコクが生まれ、甘辛い味が芯までしっかりと染み込み、ホクホクとした食感が際立ちます。

その奥には、少しずつ暖かくなる気候に合わせて、ひんやりと口当たりの良い筍の煮凝りを。

一番奥の桜豆腐は、本物の桜と上質な吉野葛(よしのくず)を合わせて、厨房でじっくりと時間をかけて練り上げたものです。なめらかな舌触りのあとに、ふわりと奥ゆかしい桜の風味が広がります。

個室で過ごす時間と、ご自宅での楽しみ方

こうした八寸は、すべてが一つの完成されたコース料理のハイライトでもあります。

お店にお越しいただいた際は、周りを気にせず過ごせる完全個室のお座敷やイス席で、ご家族やご友人との会話を楽しみながら、一品一品に込められた手仕事と季節の移ろいを感じてみてください。

また、安来家では仕出し料理の配達も行っております。これから梅雨に入り、「雨が降っているから、外に出るのは少し億劫だな」という日もあるかもしれません。

そんな時は、ご自宅の食卓に配達のお弁当を広げてみてください。ご自宅へお届けする折詰弁当や松花堂弁当の中にも、厨房で丁寧に仕込んだ季節の手仕事をたっぷりと詰め込んでお届けいたします。お家で好きなお酒を傾けながら、ゆっくりと初夏の味覚を味わうのも、素晴らしい休日の過ごし方です。

ご来店のお席も、配達の仕出しも、お客様の「美味しいものが食べたい」という想いに全力でお応えします。人数やご予算、お好みなど、お気軽にお電話でご相談ください。

五月の第ニ日曜日は、母の日です。

毎日、家族のために献立を考え、台所に立ち、食事を作ってくれるお母さん。「今日くらいは家事をお休みして、美味しいものを食べてゆっくりしてほしい」。そんなご家族の優しい想いに応えられるよう、阿倍野の安来家では、初夏の気配を感じる特別な日本料理をご用意しています。

お店でゆっくりと味わう、五月の昼懐石

母の日のお祝いでは、お母様を連れてお店にご来店いただき、ゆっくりと「懐石料理」を召し上がるお客様がとても多いです。

誰かが自分のために作ってくれたお料理を、上げ膳据え膳で楽しむこと。それ自体が、お母様にとって何よりのプレゼントになるはずです。

お料理の内容も、春から初夏へと衣替えをしています。

五月に入ると、日本料理の世界では「走り(その季節の出始め)」の食材として、鱧(はも)が登場し始めます。丁寧に骨切りをしたふっくらとした鱧の味わいは、初夏が近づいてきたことを知らせてくれます。

写真は、まだ今四月ですので今月お出ししている揚げ物の一皿です。

サクッとした歯ごたえが楽しい「筍(たけのこ)の挟み揚げ」と、ほのかな苦味が心地よい「稚鮎(ちあゆ)の天ぷら」を盛り合わせました。季節の移ろいを、目と舌でじっくりと味わっていただけます。

お家でのごちそうには、お寿司や折詰弁当を

「お母さんに気を使わせず、いつもの自宅でリラックスして食べたい」というご家族には、仕出し料理の配達をおすすめしております。

母の日の配達では、定番の「折詰弁当」はもちろんのこと、華やかな「上にぎり寿司」や、彩り豊かな「ちらし寿司」をご注文いただくこともよくあります。ご自宅の食卓に広げるだけで、パッとお祝いの席が完成します。

「お皿を洗わなくていいこと」も贈り物のひとつ

お召し上がりになったあとは、ふたを閉めて、そのまま廊下や玄関の隅に置いておいていただければ大丈夫です。

「折詰弁当」の場合は、使い捨てですのでそのまま破棄していただけます。

「食べ終わったあとに、洗い物をしなくていい」。これも安来家の仕出しをご利用いただくメリットのひとつかなと思います。ぜひ、食後もご家族でゆっくりとお過ごしください。

【店舗案内・ご予約について】

安来家では、ご来店でのお食事、ならびにご自宅や会社への仕出し配達を承っております。

ご予定が決まりましたら、お気軽にお電話にてご相談ください。

■ 配達エリアについて

普段は、お店のある阿倍野区を中心に、西成区、住吉区周辺への配達を多く承っております。

ただ、少し離れた場所からお問い合わせをいただくことも多く、現在では大阪市内全域、および堺市などにも配達にお伺いしております。「うちの住所でも届けてもらえるかな?」と迷われた際は、遠慮なくお尋ねください。

■ お店のお席について(個室完備)

ご年配の方でも座りやすい「イス席(テーブル席)」の個室と、

小さなお子様連れでも安心な「お座敷」の個室をご用意しております。

イス席: 最大18名様まで

お座敷: 最大14名様(20名様まで実績あり)

ご親族での集まりや、会社でのご宴会など、人数に合わせてお部屋をご用意いたします。

■ 駐車場のご案内

お店の専用駐車場を**「2台分」**ご用意しております。

お車でご来店されるお客様が多く、満車となってしまう場合もございますが、すぐ近くにコインパーキングがございますので、そちらをご案内させていただきます。お車でお越しの際は、ご予約時にお知らせいただくとスムーズです。

どんなことでも、お気軽にご相談いただければと思います。

四月に入り、少しずつゴールデンウィークの足音が近づいてきました。

今年の連休も、久しぶりにご親族で集まったり、お子様の健やかな成長を祝ったりと、ご家族で食卓を囲む機会が多いのではないでしょうか。

阿倍野の安来家では、4月の春満開の御料理の時期から少し季節を進め、春と初夏の狭間を感じていただける「端午の節句」をテーマにしたお料理の準備も始めています。

新緑をあしらった、五月の八寸

写真は、昨年のゴールデンウィーク頃にお出しした皐月の懐石「八寸」です。

お盆の真ん中には五月ならではの「粽(ちまき)寿司」を置き、瑞々しい新緑の青紅葉(あおもみじ)を飾りました。

左の小さな器には桜エビとほうれん草のお浸し、右には新じゃがのオランダ煮を。手前には、筍の鳴門巻きにホタルイカ、合鴨ロース、鯛の子、そして安来家定番のだし巻き卵を彩りよく盛り込んでいます。

香魚(鮎)とスイカソースの組み合わせ

この一皿の中で、中央に据えたのは「稚鮎(ちあゆ)のから揚げ」です。

新鮮な鮎は「香魚」とも呼ばれ、ほんのりとスイカのような爽やかな香りがすると言われています。そこで安来家では、その特徴を引き立てるため、稚鮎の下に特製の「スイカソース」を合わせてお出ししています。

口に入れたときの驚きと、この季節にしか味わえない香りを、ご親族の皆様で楽しんでいただければと思います。

連休中のご予約について(お早めのご相談のお願い)

ゴールデンウィークに向けて、少しだけお店からのお知らせです。

ありがたいことに、連休中のお食事のご予約を少しずついただき、お店の個室(お座敷)はすでに埋まり始めているお日にちもございます。また、ご自宅でゆっくりと集まるための仕出し(配達)のお弁当も、続々とご注文をいただいている状況です。

「久しぶりの集まりだから、きちんとした美味しいものを」というご家族の想いに応えられるよう、私たちもさまざまな準備を進めております。

もし連休中のお集まりの日程が決まりましたら、どうぞお早めにお電話でご相談ください。

人数やお好みに合わせて、その日のためのちょうどいい形を一緒に考えさせていただきます。

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